医師と患者の意識差を糖尿病治療にどう反映する

提供元:ケアネット

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公開日:2015/04/09

 

 2015年3月24日、「糖尿病患者と医師の意識の違い~調査から読み解く!糖尿病治療を継続させるために~」と題したプレスセミナー(主催:シオノギ製薬)が、寺内 康夫氏(横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学 教授)を講師に迎え、東京都内において開催された。
 このセミナーは、同社が行ったインターネット調査「糖尿病患者と医師の治療と行動に関する意識調査(T-CARE Survey2)」の結果発表に合わせて行われたもの。寺内氏は、この結果を基に、糖尿病診療の現状や課題に触れたうえで、トータルケアの実践へ向けたサポート施策の在り方について述べた。
※T-CARE Survey2:患者と医師双方に対し同内容の質問項目(発症状況の把握、治療の状況、生活満足度など)を設定し、両者の意識のギャップを明らかにすることで、今後の円滑な治療へ導くことを目的に行われた調査。全国の糖尿病患者3,580人(20~60代男女)ならびに医師298人を調査対象とし、2015年1月に実施された。

医師が考えるよりも、患者は合併症リスクを軽く考えている
 調査によると、合併症などのリスクについての説明は、医師が思っているほど患者には伝わっていないことが明らかになった。医師の「説明をしている」よりも患者の「説明を受けたことがある」がすべての項目で下回っており、とくに「脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなる」説明を「受けたことがある」患者と「説明している」医師の間には、大きな開きがあった(患者49.1%vs.医師93.3%)。
 このこととも関係してか、患者の合併症への心配・不安は、それほど高くない。たとえば「脳卒中になりそうで怖い」と思っている患者は、医師が考えているよりも少なく(患者23.2%vs.医師39.6%)、また、血糖値の治療目標値についても、医師が思っているほど患者には認知されていないことも判明した(目標血糖値を知っている:患者48.0%vs.医師62.1%)。

生活習慣改善の治療実践はまだ不十分
 その反面、医師が思っているよりも、治療継続の必要性を感じている患者は多い。糖尿病治療を「継続しなければならない」と回答した患者が89.4%であったのに対して、「患者自身が治療を継続しなければならないと思っている」と回答した医師は62.1%と、開きがあった。
 一方で、患者に生活習慣改善治療に関して聞いたところ、「運動をしっかりやっている」(30.3%)、「食事の管理をしっかりやっている」(32.5%)と、いずれの回答も約3割にとどまった。どちらも医師が考えている割合(運動41.6%、食事管理42.3%)を下回っており、患者は医師が期待するほど生活習慣の改善を実践できていないことが判明した。

医師以外の相談相手がいないと感じている患者たち
 チームサポートの視点から見た場合、医師がメディカルスタッフに与えている役割については、施設間の格差が生じる結果となった。とくに看護師による「糖尿病教室」の開設(開業医7.5%vs. 病院32.2%)や「フットケア」の実施(開業医14.0%vs. 病院46.8%)では、開業医と病院で大きな開きが出た。
 また、患者の7割弱が「医師以外に治療に関係している医療関係者がいない」(64.9%)と回答するなど、患者がメディカルスタッフを相談相手として認識できていないことも明らかとなった。

半数の患者家族が病気に理解あり、ただし診察への同行まではしてくれない
 家族を含む周囲のコミュニティサポートでは、家族が「治療やケアに協力的」な患者は半数にとどまり(患者55.2%vs. 医師46.1%)、また、家族が「診察に一緒に同行してくれる」と回答した患者は10人に1人にとどまった(患者12.7%vs.医師33.6%)。

生活習慣の改善や家族の協力をいかに確保するか
 最後に、今回の調査のまとめとして、以下の事項があげられた。すなわち、医師の意識よりも患者は「糖尿病の内容や治療の必要性を理解している」こと、その一方で医師が思うよりも患者は「自身の病状・合併症のリスクを理解しておらず、治療(とくに生活習慣改善)が実践できていない」こと、「治療実践に必要なメディカルスタッフや家族のサポートも少なく、医師以外に相談する意識も低い」ことなどである。
 したがって、医師側の今後の課題としては、「合併症リスクの説明の充実」や「より一層の生活習慣改善の指導」に加え、「患者家族や周囲を巻き込んだサポート体制の構築」が挙げられる。
 将来的には、現在国が推進している「地域包括ケアシステム」を念頭に、患者のトータルケア実践に向け、患者自らが治療方針や治療実践に積極的に関与できるように、医療機関や家族のサポート、地域ケアが円滑に進むことが期待されるとレポートを終えた。

 なお、調査の詳細については、同社のサイトから確認することができる。
 シオノギ製薬:調査結果一覧(PDF)

(ケアネット 稲川進)