肥満や2 型糖尿病はがん関連死亡と関連しているが、肥満でも糖尿病でもない場合に高インスリン血症はがん死亡の危険因子となるのだろうか。国立国際医療研究センター病院の辻本 哲郎氏らの前向きコホート研究で、糖尿病ではない非肥満者において、高インスリン血症だとがん死亡リスクが高いことが示された。この結果から、肥満であるかどうかにかかわらず、高インスリン血症の改善はがん予防のための重要なアプローチとなりうる、と著者らは結論している。International journal of cancer誌オンライン版2017年4月8日号に掲載。
著者らは、1999~2010年の国民健康栄養調査のデータを用いて、前向きコホート研究を実施し、2011年12月31日まで追跡した。がん死亡率の主な解析は、Cox比例ハザードモデルを用いて、高インスリン血症の有無別にハザード比(HR)を算出した。高インスリン血症は空腹時インスリン10μU/mL以上と定義し、死亡原因は国際疾病分類第10版を使用した。
主な結果は以下のとおり。
・本研究には、糖尿病やがんの既往のない20歳以上の9,778人が参加し、非肥満者が6,718人(高インスリン血症が2,057人[30.6%])、肥満者が3,060人(高インスリン血症が2,303人[75.3%])であった。全体の99.9%がフォローアップを完了した。
・試験参加者全体において、高インスリン血症の患者はそうではない患者に比べ、がん死亡率が有意に高かった(HR:2.04、95%CI:1.24~3.34、p=0.005)。
・非肥満者においても同様に、多変量解析により、高インスリン血症の患者はそうではない患者に比べ、がん死亡率が有意に高かった(調整HR:1.89、95%CI:1.07~3.35、p=0.02)。
(ケアネット 金沢 浩子)