エンドセリン受容体拮抗薬の糖尿病性腎症への効果は?:SONAR試験/国際腎臓学会

提供元:ケアネット

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公開日:2019/04/18

 

 2010年に報告されたASCEND試験1)において、糖尿病性腎症に対する腎保護作用を示しながら、心不全増加のため有用性を証明できなかったエンドセリン受容体拮抗薬だが、対象例を適切に絞り込めば有用であることが、ランダム化二重盲検試験“SONAR”の結果から明らかになった。本試験は、4月12~15日にオーストラリアで開催された国際腎臓学会(ISN)-World Congress of Nephrology(WCN)2019のBreaking Clinical Trialsセッションにおいて、Dick de Zeeuw氏(オランダ・グローニンゲン大学)らが報告した。

エンドセリン受容体拮抗薬の短期服用でUACRが低下する例に限定
 SONAR試験の対象は、最大用量のレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬服用中の、慢性腎臓病(CKD)合併2型糖尿病例のうち、エンドセリン受容体拮抗薬atrasentan 0.75mg×2/日を6週間服用し(導入期間)、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が30%以上低下した例である。

 「UACR低下率≧30%」を基準にした理由は、以下のとおり。

 先述のASCEND試験において観察された心不全入院の増加は、エンドセリン受容体拮抗薬開始後に体重増加が大きい群で著明に高く2)、また別の臨床試験において、エンドセリン受容体拮抗薬による早期のUACR低下は、その後の体重と有意に逆相関していた3)。つまり、エンドセリン受容体拮抗薬の短期服用でUACRが低下する例に限定すれば、心不全発症高リスク例を除外できる可能性があると考えたわけである。

無作為化されたのは適格例の約半数
 適格例の5,630例が導入期間に入り、6週間後、52%に相当する2,648例で「UACR低下率≧30%」が認められた。

 これら2,648例の、導入期間開始時における平均年齢は64.8歳、HbA1c平均値は7.8%だった。腎機能は、推算糸球体濾過率(eGFR)平均値が43.8mL/分/1.73m2、UACR平均値は約800mg/gであった。

 治療薬としては、ほぼ全例がRAS阻害薬を服用、70%強がスタチンを服用していた。

 これら2,648例は、atrasentan 0.75mg×2/日服用群(1,325例)とプラセボ群(1,323例)にランダム化され、二重盲検法にて2.2年間(中央値)追跡された。

エンドセリン受容体拮抗薬で腎機能低下を抑制
 その結果、主要評価項目である「血清クレアチニン(Cr)値倍増・末期腎不全への移行」の、atrasentan群における対プラセボ群ハザード比(HR)は、0.65(95%信頼区間 [CI]:0.49~0.88)の有意低値となった(atrasentan群:6.0% vs.プラセボ群:7.9%)。

 内訳を見ると、atrasentan群で著明に減少していたのは「血清Cr値倍増」であり(HR:0.61、95%CI:0.43~0.87)、「末期腎不全への移行」には有意なリスク減少を認めなかった(HR:0.73、95%CI:0.53~1.01)。

 またatrasentan群における主要評価項目抑制は、事前設定したすべてのサブグループにおいて一貫していた。

エンドセリン受容体拮抗薬群の心不全リスクは高まらなかった
 懸念される「心不全」(発症・増悪)は、atrasentan群で5.5%と、プラセボ群の3.9%よりも高値となったが、有意差には至らなかった(p=0.064)。一方、「貧血」はASCEND試験同様、エンドセリン受容体拮抗薬群で有意に多かった(18.5% vs.10.3%、p<0.001)。

 また「重篤な有害事象」発現率も、atrasentan群で有意に高かった(36.3% vs.32.6%、p=0.049)。ただし「有害事象による脱落」は有意差とならなかった(10.4% vs. 9.2%、p=0.360)。

 本研究は、報告と同時にLancet誌オンライン版で公開された。

(医学レポーター 宇津 貴史)