新型コロナウイルスのmRNAワクチン(以下、コロナワクチン)を2回接種した人ではコロナ罹患後症状(post-COVID)の発現リスクが21%低いものの、短時間睡眠の人ではその効果が弱い可能性があることを、スウェーデン・ウプサラ大学のPei Xue氏らによる研究グループが明らかにした。Translational psychiatry誌2023年2月1日号掲載の報告。
コロナ罹患後症状のリスク低減には6時間以上の睡眠を
夜間の睡眠時間が短いとコロナワクチン接種による抗体産生が減弱し、睡眠時間が長過ぎても健康状態が悪化するという報告がある。そこで研究グループは、コロナワクチンを2回接種していても、短時間睡眠(6時間未満)の人と長時間睡眠(9時間超)の人は、いずれも通常の睡眠時間(6~9時間)の人と比べてコロナ罹患後症状の発現リスクが高いという仮説を立てて調査を行った。
コロナ罹患後症状の定義は、「少なくとも3ヵ月以上続く1つ以上のCOVID-19に関連する症状(息切れ/呼吸困難、胸痛、嗅覚・味覚異常など)」とした。第2回国際COVID-19睡眠研究(ICOSS-2)の2021年5~12月のデータを用い、年齢、性別、BMIなどの要因で調整し、多変量ロジスティック回帰分析で解析した。
コロナ罹患後症状の発現リスクと睡眠時間の関係を調査した主な結果は以下のとおり。
・解析対象9,717例(18~99歳)のうち、コロナワクチンを2回接種した人(5,918例)では、コロナワクチンを接種していない人や1回のみ接種した人よりも、罹患後症状を発現するリスクが21%低かった(調整オッズ比[aOR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.71~0.89、p<0.001)。
・コロナワクチンを接種していない人と1回のみ接種した人では、罹患後症状のリスクに有意差はなかった(aOR:1.13、95%CI:0.95~1.34、p=0.169)。
・コロナワクチンを2回接種した人のうち、調査時に短時間睡眠であった人および長時間睡眠であった人では、通常の時間睡眠であった人よりも有意に罹患後症状のリスクが高かった(短時間睡眠群のaOR:1.56、95%CI:1.29~1.88、長時間睡眠群のaOR:1.87、95%CI:1.32~2.66)。
・コロナワクチンを2回接種した人のうち、コロナ流行前もコロナ流行中も持続的に短時間睡眠であった人では罹患後症状のリスクが有意に高かった(aOR:1.59、95%CI:1.24~2.03、p<0.001)が、持続的に長時間睡眠であった人では有意差はみられなかった(aOR:1.18、95%CI:0.70~1.97、p=0.539)。
・コロナワクチンを接種していない人と1回のみ接種した人のうち、コロナ流行前もコロナ流行中も持続的に短時間睡眠であった人では罹患後症状のリスクが有意に高く(aOR:1.91、95%CI:1.50~2.42、p<0.001)、持続的に長時間睡眠であった人でも有意に高かった(aOR:2.07、95%CI:1.54~2.78、p<0.001)。
これらの結果より、研究グループは「本研究により、新型コロナウイルスのmRNAワクチンを2回接種した人ではコロナ罹患後症状のリスクが21%低いことが明らかになった。しかし、持続的に短時間睡眠の人では効果が弱い可能性があるため、6時間以上の睡眠を取るように促すことで罹患後症状のリスクを低減できる可能性がある」とまとめた。
(ケアネット 森 幸子)