脂肪性肝疾患は心不全リスクを増大させる?

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/12/14

 

 肝臓に異常な脂肪が蓄積する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が、心不全リスクを大幅に高める可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。この研究結果は、米国心臓協会(AHA)学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)で発表された。

 米国では成人の4人に1人がNAFLDであるとされている。NAFLDは、恒久的な肝臓の損傷を引き起こしたり、プラークが動脈に蓄積して血流を制限するアテローム性動脈硬化症の発症リスクを増大させたりすることが知られている。しかし、NAFLDと心不全(心臓が十分に血液を送り出せない状態)との関係は、これまであまり研究されていなかった。米国での心不全患者の数は約600万人に上る。心不全は、完治は望めないものの、生活習慣の是正、薬剤および外科的処置による治療は可能だ。

 今回の研究では、2005~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータの分析が行われた。その結果、対象とされた成人の4.7%(8235万8,893人中383万3,667人)がNAFLDに罹患し、そのうちの10.5%(40万355人)は心不全も有していることが分かった。NAFLD患者の中でも高齢者、男性、糖尿病または冠動脈性心疾患を有する人では心不全リスクが特に高く、年齢、人種、性別を考慮しても、NAFLD患者での心不全リスクは、NAFLDではない人の3.5倍に上ることが示された。研究を率いた米エモリー大学医学部心臓病学分野のVardhmaan Jain氏は、「NAFLD患者での心不全リスクは高いと予想してはいたが、これほどとは思わなかった」と述べている。

 Jain氏は、「医師は患者の心機能とともに肝臓バイオマーカーにも注意し、心不全患者が脂肪肝になったり、それとは逆に、脂肪肝の患者が心不全を発症したりすることがないようにする必要がある」と述べている。

 Jain氏によると、NAFLDの主な原因は、肥満、糖尿病、高コレステロールである。同氏は、心血管の健康の向上と維持を目的とした、AHAの「生活エッセンシャル8」のチェックリストの活用を勧めている。生活エッセンシャル8のチェックリストは、正常体重の維持、禁煙、運動・身体活動、健康的な食事、十分な睡眠、血圧・コレステロール・血糖値の管理の8項目で構成されている。

 Jain氏は、「この研究結果は、人生の早い段階で健康のことを真剣に考え、長期にわたって健康的なライフスタイルを維持することの重要性を強調するものだ」と話す。その一方で同氏は、この研究の限界点について、「因果関係を明らかにしたものではなく、また、さまざまな種類の心不全を区別して検討してもいなかった」と述べる。その上で同氏は、今後の課題として、NAFLD患者を長期間追跡して、心不全発症の予測因子を明らかにする必要性に言及している。

 今回の研究には関与していない、NAFLDと心血管リスクに関するAHAの声明を作成した委員会で議長を務めた米オレゴン健康科学大学のP. Barton Duell氏は、「NAFLDは肝硬変、肝不全および肝がんのリスク増大にも関連している」と指摘。「肥満やメタボリックシンドロームの有病率が上がり続ける現在、医師も一般の人々も、NAFLDを深刻に受け止める必要がある」と話す。同氏は、NAFLDが過小診断され、また適切に評価されていない健康リスクであるとし、「NAFLDは非常によく見られる疾患であり、早期に発見して治療することが大切だ」と主張している。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

[2022年11月16日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
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