低炭水化物食は糖尿病リスクの抑制にも良い可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/12/23

 

 血糖値が極端に高くはない人の糖尿病発症予防という目的でも、低炭水化物の食事スタイルが役立つ可能性が示された。米テュレーン大学のKirsten Dorans氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に10月26日掲載された。

 食後の血糖値を上げるように働く炭水化物の摂取量を抑える「低炭水化物食」は、糖尿病患者の治療という場面での有用性を示すエビデンスが増えてきている。ただし、糖尿病の発症予防という点でのエビデンスはまだ少ない。そこでDorans氏らは、まだ糖尿病の治療を受けておらず、HbA1cが6.0~6.9%とそれほど高くない集団を対象とする無作為化比較試験により、この点を検討した。

 研究参加者は150人で、平均年齢58.9±7.9歳(範囲40~70歳)、女性72%、BMI35.9±6.7、HbA1c6.16±0.3%。75人ずつの2群に分け、低炭水化物食群に対しては、前半3カ月間は炭水化物を1日40g未満、後半3カ月間は同60g未満を目標とする栄養介入を行った。最初の4週間は毎週1回、それ以降は隔週で個人面接を行ったほか、電話やグループ教育によるフォローアップが継続された。一方、対照群には食事に関する一般的な注意事項を示した書面を手渡し、各自で食事療法を行うように指示したほか、食事とは関係のないトピックの教育セッションが毎月行われた。

 摂取エネルギー量は、ベースライン時点では低炭水化物食群が1,890±775kcal、対照群が1,789±812kcalであり、炭水化物の摂取量は同順に207±98g、190±86gだった。介入終了時点では、摂取エネルギー量が1,439±500kcal、1,757±645kcal、炭水化物の摂取量が96±52g、187±73gだった。なお、低炭水化物食群の介入中の摂取エネルギー量の約半分は脂質が占めていたが、それらは主にオリーブオイルやナッツなどの食品に含まれる、健康的な一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸だった。

 主要評価項目として設定されていた介入前後でのHbA1cの変化は、低炭水化物食群が-0.26%(95%信頼区間-0.33~-0.19)で有意だった一方、対照群は-0.04%(同-0.10~0.02)で非有意であって、低下幅に有意差が認められた〔-0.23%(-0.32~-0.14)〕。また、空腹時血糖値の低下幅〔-10.3mg/dL(-15.6~-4.9)〕や体重減少幅〔-5.9kg(-7.4~-4.4)〕にも有意差が認められた(全てP<0.001)。

 この結果から、糖尿病発症リスクが高い人は、発症してから炭水化物摂取量を減らすのではなく、すぐに低炭水化物食を始めてもそのメリットを得られる可能性のあることが明らかになった。Dorans氏は、「示されたHbA1cの差異は数値としては大きなものではないが、臨床的には大きな違いと言える。われわれの研究からの重要なメッセージは、低炭水化物食を続けることで2型糖尿病の予防と治療に役立つ可能性があるということだ」と述べている。

 米疾病対策センター(CDC)によると、同国の糖尿病患者数は約3700万人であり、前糖尿病の人が9600万人と推計されており、後者の8割以上は自分がその状態に該当することを知らずにいるという。前糖尿病は、2型糖尿病だけでなく、心臓発作や脳卒中のハイリスク状態でもある。また、糖尿病発症後にはその治療が不十分だと、視力低下や腎臓病、神経障害による手足のしびれなどのリスクが高くなる。

[2022年10月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら