室内の空気が乾燥し過ぎても、逆に湿度が高過ぎても、新型コロナウイルスの感染率や、感染後の重症化および死亡のリスクが増大する可能性があるようだ。米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究で、室内の相対湿度を40~60%に維持すると、新型コロナウイルスへの感染率および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡率が低下することが明らかにされた。研究論文の筆頭著者で、ハーバード・MIT健康科学・技術プログラムに参加するConnor Verheyen氏は、「この中程度の相対湿度が防御効果をもたらす可能性がある」と述べている。この研究の詳細は、「Journal of the Royal Society Interface」に11月16日掲載された。
研究グループによると、多くの人が快適と感じる相対湿度は30~50%であるという。新型コロナウイルスが季節ごとの気象条件の影響を受ける可能性は以前から示唆されていたが、過去の研究では屋外の気象条件を考慮してウイルスのパターンを検討する傾向があった。これに対してMITの研究グループは、90%以上の時間を室内で過ごす人が多く、またウイルス感染のほとんどが室内で発生することから、見方を変える必要があると考えた。
今回の研究では、新型コロナウイルスのデータを、121ヵ国から取得した気象学的測定値と組み合わせて検討した。ワクチンが利用可能になる前の2020年1~8月のCOVID-19の罹患者数および死亡者数を集計し、各日のデータをその日の平均室内湿度の推定値と比較した。ガイドラインでは、人が快適と感じる温度を19〜25℃とされている。研究グループはこの温度に基づき、屋外の気温が19℃を下回ると暖房が使用され、室内の湿度が下がるものとして、室内の相対湿度を算出した。
その結果、戸外の湿度は1年を通じて50%程度であるが、室内の相対湿度は、COVID-19罹患者や死亡者の数が急増する気温の低い時期には、40%を下回る傾向にあることが明らかになった。また、熱帯諸国では夏季に室内湿度が緩やかに上昇するが、60%を超えるとCOVID-19による死亡者数の増大に反映されることも分かった。このように、COVID-19の罹患者数と死亡者数は、1年のどの時期であるかにかかわらず、地域の室内の相対湿度が40%より低い、または60%より高いときに増加する傾向が確認された。一方、ほとんどの地域で、室内の相対湿度が40~60%のときには、感染者、死亡者ともに比較的少なかった。
共同研究者であるMITのLydia Bourouiba氏は、「COVID-19に関するデータはノイズが多く一貫性がないことがあるため、今回の分析結果については懐疑的な視点から徹底的に検証した。しかし、COVID-19に対する政策の国ごとの違いや屋外の条件の差を考慮しても、室内の相対湿度とCOVID-19の転帰との間に強固な関連が認められた」と話す。なお、室内の湿度が新型コロナウイルスの病原性にこれほどの影響を及ぼす理由は明らかになっていないが、追跡研究からは、湿度が非常に低い場合や高い場合には、ウイルスが飛沫内で長く生き残る可能性のあることが示唆されている。
[2022年11月18日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら