米食品医薬品局(FDA)は11月30日、再発性のクロストリディオイデス(クロストリジウム)・ディフィシル感染症(Clostridioides difficile infection;CDI)に対する治療として、糞便微生物叢製品Rebyotaを承認したことを発表した。FDAによる糞便微生物叢製品の承認は今回が初めてである。対象は、抗菌薬による治療を終えた18歳以上の再発性CDI患者で、投与方法は、直腸への単回投与である。
CDIはクロストリディオイデス・ディフィシルを原因菌とする感染症で、抗菌薬の使用により腸内の微生物叢が変化し、クロストリディオイデス・ディフィシルが増殖して毒素を放出し、これにより発熱や下痢、腸炎などが生じる。重症の場合には臓器不全が生じて致死的となることもある。AP通信によると、米国では年間1万5,000~3万人がCDIで死亡しているという。また、いったん回復しても再発する可能性が高く、感染を繰り返す人も多い。CDIのリスク因子は、65歳以上であること、入院、免疫系の低下、CDIの既往などである。
今回の承認が下りるまで、CDIの治療には健康なドナーが提供する糞便検体が用いられていた。これは、糞便移植と呼ばれる方法で、ドナーの腸内の健康な細菌を移植することにより病状改善を狙うものだ。フェリングファーマ社が販売するRebyotaも、同じくヒトの糞便から調製される。ドナーはさまざまな伝染性病原体の検査を受けているが、FDAは、感染症のリスクはゼロではないとしている。
Rebyotaの安全性は、CDIの1回以上の再発歴がある患者978人を対象とした2件のランダム化二重盲検試験および複数の非盲検試験により評価された。対象者には、抗菌薬による治療完了から24~72時間後に、CDIがコントロールされた状態でRebyotaまたはプラセボのいずれかが1回以上投与された。1件の試験では、プラセボ群(87人)に比べてRebyota群(180人)に特によく生じた副作用として、腹痛、下痢、腹部膨満、鼓腸、悪心が確認された。
有効性については、ランダム化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験のデータを分析して評価された。対象者はRebyota1回投与群が177人、プラセボ1回投与群が85人であった。さらに、Rebyotaおよびプラセボを各1回投与した群39人、プラセボを2回投与した群43人から成る別のプラセボ対照試験の奏効率も分析に組み込まれた。両試験の結果から、8週間でのCDI再発予防における全体の奏効率はRebyota群で70.6%、プラセボ群で57.5%と推定された。
FDA生物製剤評価研究センター(CBER)のPeter Marks氏は、「この承認は、再発性CDI患者の治療にとって前進を意味する。再発性CDIは生活の質(QOL)に影響を及ぼし、生命に関わることもある。糞便微生物叢製品が初めてFDAに承認されたことで、再発性CDIを予防する承認済みの選択肢が新たに1つ増えた。この承認は、再発性CDIの治療にとって重要な節目となるものだ」と話している。
[2022年12月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら