夜にぐっすりと眠るには、たとえ曇天でも、日中に少しなりとも外に出る方が良いことが、米シアトルのワシントン大学の学生を対象にした研究で明らかにされた。研究論文の上席著者で同大学生物学教授のHoracio de la Iglesia氏は、「人間の体には生まれつき概日時計が備わっている。太陽が出ている日中に十分な光を浴びないと、この時計に遅れが生じ、夜眠くなる時間も遅くなる」と説明している。研究の詳細は、「Journal of Pineal Research」に11月20日掲載された。
今回の研究では、2015年から2018年にかけて、ワシントン大学の学部生507人に、秋から夏までの4学期のそれぞれで、2週間にわたって手首に活動状態と光への曝露を測定する時計型のデバイスを装着してもらい、そのデータから睡眠パターンと日光曝露について評価した。
その結果、学生たちの1日の睡眠時間が季節により変化することはなかったが、冬期には夏期に比べて、就寝時間が平均35分遅く、起床時間は約27分遅いことが明らかになった。この結果は、研究グループにとっては驚きであったという。なぜなら、緯度の高いシアトルでは、夏至の日照時間は約16時間だが、冬至の日照時間は8時間強と夏至の約半分である。そのためde la Iglesia氏は、「われわれは、日の長い夏には、学生は遅くまで起きているのではないかと予想していた」と話す。
このように冬期に就寝時間が遅れる理由を考えるにあたり、研究グループは光に着目した。覚醒と睡眠のサイクルを支配する概日リズムの周期は本来約24時間20分であるが、外部環境の影響により日々調整されている。De la Iglesia氏は、「日中、特に朝に光を浴びると概日時計が進み、夕方に疲れを感じる時間も早くなる。それとは逆に、遅い時間や夕方に光を浴びると時計が遅れ、疲れを感じる時間も遅くなる」と説明する。
今回の研究では、日中に浴びる光が概日リズムに与える影響は、夜間の光が与える影響よりも大きいことも明らかにされた。昼間に日光を1時間浴びるごとに、学生の概日リズムは30分早まった。これは曇りの日でも変わらなかった。一方、夜間に照明やパソコン画面などの室内の光を1時間浴びるごとに、概日リズムは平均15分遅れた。このことからde la Iglesia氏は、「学生は冬の間、日中に十分な光を浴びていなかったため、夏に比べて概日時計に遅れが生じたと考えられる」と説明している。
研究グループは、「この研究結果は、大学生に限らず、多くの人に役立つ」との見方を示す。De la Iglesia氏は、「多くの人は、人工光の多い都市部に住み、日中も室内から外に出ない生活を送っている。今回の研究から、特に朝に少しでも外に出て自然光を浴び、夕方以降はデバイスのスクリーンからの光や人工光を極力避けることで、眠りにつきやすくなることが明らかになった」と述べている。
[2022年12月14日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら