ファイザー社製新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの2回目のブースター接種(追加接種)は心臓にとって安全であることが、前向きおよび後ろ向きコホート研究で確認された。テルアビブ大学(イスラエル)経営工学分野のDan Yamin氏らによる研究で、詳細は「Lancet Respiratory Medicine」に11月18日掲載された。
この研究では、2種類のデータを用いてファイザー社製COVID-19ワクチンの2回目のブースター接種の安全性を評価した。データの一つは、イスラエルで2番目に大きな健康保険組織Maccabi Healthcare Servicesの加入者からランダムに抽出した25万人分のデータ(後ろ向き研究)であり、もう一つは現在も継続中の前向き観察研究であるPerMed試験(前向き研究)の参加者4,698人のデータである。
前向き研究の参加者は、いずれもスマートウォッチで2年間にわたって24時間の心拍数や心拍変動に基づくストレス、睡眠の質などを測定していた。対象とされた4,698人のうち、1,785人は1回目のブースター接種を、669人は2回目のブースター接種を受けていた。データを分析した結果、2回目のブースター接種では、接種前の週に比べて接種後3日間に心拍数が有意に増加していたことが明らかになった。増加のピークは接種後2日目で、接種前に比べて平均で1分当たり1.613拍の増加だった。心拍数は接種後6日目には接種前のレベルに戻っていた。同様の傾向は、心拍変動に基づくストレスと安静時心拍数についても認められた。1回目接種後と2回目接種後との間で心拍の測定値や自己報告による副反応に有意差は認められなかった。
Yamin氏は、「ワクチン接種前に比べて接種後に心拍数の増加などの重要な変化が認められたが、6日後には元のレベルに戻っていた。この結果は、2回目のブースター接種の安全性を保証するものだ」と述べている。
後ろ向き研究の対象者では、9万4,169人が1回目のブースター接種を、1万7,814人が2回目のブースター接種を受けていた。急性腎障害や心筋梗塞、ベル麻痺などの25種類の有害事象の発生頻度について、1回目または2回目のブースター接種を受ける42日前と接種後42日目で比較した。その結果、いずれの有害事象についても、2回目のブースター接種後の発生リスク上昇は認められなかった。また、2回目のブースター接種後に心筋梗塞や心筋炎の診断を受けた対象者はいなかった。
これらの結果について研究グループは、「対象者から得た客観的なデータと主観的なデータを用いた今回の分析から、適格者に対するファイザー社製ワクチンの2回目のブースター接種の安全性が裏付けられた」と結論付けている。
研究グループによると、最も驚くべき発見は、スマートウォッチがそれを着用していた人よりも敏感だったことだという。「多くの人は、ワクチン接種後に疲労や頭痛などを訴えたが、2〜3日で元に戻ったと報告していた。しかし、スマートウォッチのデータからは、これらの人ではさらに数日にわたって心拍数が明らかに変化していたことが読み取れた。また、ワクチン接種後に副反応がないと報告していた人でも、データ上では生理学的な変化が確認された人もいた」と説明。その上で、「つまり、今回の研究から、スマートウォッチはそれを身に着けている人よりも全身の感覚に敏感だということが明らかになった」と話している。
[2023年1月4日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら