食事を変更すると、短期間でも健康や認知機能などのパフォーマンスに変化が現れる可能性が、米航空宇宙局(NASA)の研究で明らかになった。宇宙食に含まれる、野菜や果物、魚などを増やしたところ、宇宙飛行士のコレステロールレベルやストレス状態、認知機能に有意な変化が生じたという。NASAのGrace Douglas氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に12月15日掲載された。
宇宙飛行は人間の健康に影響を及ぼすことが知られている。また宇宙船はスペースや電力に限りがあることから、持ち込む食料にはさまざまな制限が課せられる。さらに宇宙環境は医療資源が乏しいため、健康リスクをできるだけ抑制し得る食品が期待される。そのため、安全性や栄養価に優れた宇宙食の開発が続けられている。Douglas氏らの研究は、このような条件によりマッチするように改良された新開発の宇宙食の有用性を、16人の宇宙飛行士(平均年齢40±9歳、男性10人、BMI23.7±2.8)を対象に検証したもの。
米テキサス州ヒューストンにある、実際の宇宙船内の環境を忠実に再現した研究室内で、4人ずつ各45日間、計4回のミッションが行われた。ミッション中、従来の宇宙食と新たに開発された宇宙食を支給。宇宙飛行士からは、唾液、尿、血液、便の検体が採取され、また認知機能を評価するテストが行われた。なお、新たに開発された宇宙食は従来のものに比べて、果物、野菜、魚、フラボノイド、オメガ3脂肪酸をより多く含むように改良されていた。
検討の結果、改良された宇宙食が支給される条件では、1日あたりの野菜・果物の摂取量が2.34±0.34サービング増え、魚の摂取量は5.25±1.52gオンス(150g弱)増えていた。また、コレステロールの低下、ストレスの軽減を意味するコルチゾールの低下が観察され、さらに、認知機能(処理速度、正確性、注意力)の向上も認められた。腸内細菌叢の安定性も、改良された宇宙食支給時の方が優れていた。免疫応答には変化は認められず、感染症の発生などのトラブルは生じなかった。
これらの結果に基づきDouglas氏らは、「新開発の宇宙食は健康とパフォーマンスに大きなメリットをもたらし、宇宙飛行士にとっては例え短期間のミッションであっても有益なものとなり得る」と結論付けている。その上で、「より健康的な宇宙食の確立のため、さらなる研究が求められる。食料は宇宙開発に必要不可欠であり、リスクが最小化されメリットが最大化された宇宙食によって、地球周回軌道をはるかに超える将来の宇宙探査ミッションの安全な施行が可能となる」と述べている。
[2022年12月26日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら