COPD患者は手術後1年間の死亡リスクが高い

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/02/20

 

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者が手術を受けた場合、術後1年間は死亡リスクが高い状態で推移するとのデータが報告された。トロント大学(カナダ)のAshwin Sankar氏らの研究によるもので、詳細は「Canadian Medical Association Journal(CMAJ)」に1月17日掲載された。死亡リスクだけでなく、医療コストもCOPDでない患者より高額になるという。

 COPDは呼吸機能が低下する疾患群で、以前は肺気腫、慢性気管支炎と呼ばれていた病気の総称。米疾病対策センター(CDC)によると、米国のCOPD患者数は約1600万人に上る。COPD患者はCOPD以外の疾患を併発していることが多く、フレイル(ストレス耐性が低下した状態)に該当することも多い。実際、COPD患者は手術後30日以内の合併症や死亡のリスクが高いことが知られている。ただし、より長期間経過した後にも、そのようなハイリスク状態が続いているのかどうかは、これまであまり検討されていなかった。Sankar氏らはこの点に着目して新たな研究を実施。その結果、大手術を受けたCOPD患者は、呼吸器系に問題のない患者と比べて、1年以内の死亡率が61%高く、医療費も13%多くかかっていることが明らかになった。

 この結果を基にSankar氏は、「手術のリスクを患者に伝えることは、手術前インフォームドコンセントのプロセスの重要な要素だ。COPD患者が手術を受けるか否かを判断する際に、臨床医は本研究で示されたような情報を伝えるべきだろう」と話している。ただ、COPD患者の多くが何らかの慢性疾患を併発しているため、手術後の死亡リスク上昇の原因がCOPDだと断定することは難しい。とはいえ同氏は、「COPDの有無をハイリスク状態のフラグとして利用することができる。フラグが立っている場合は、ほかの変更可能なリスク因子が最適な状態に管理されているかを入念に確認すべきだろう」と述べている。

 Sankar氏らの研究は、カナダのオンタリオ州の医療情報データベースを後方視的に解析する手法で実施された。2005~2019年に待機手術を受けた93万2,616人〔年齢中央値65歳(四分位範囲55~75)、女性59.9%〕のうち、17万482人(18%)がCOPDを有していた。

 術後30日間の追跡でCOPD患者の全死亡リスクは非COPD患者より72%高く、1年間の追跡でも61%ハイリスクだった。死亡リスクに影響を及ぼし得る因子〔年齢、性別、併存疾患(高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、冠動脈疾患、末梢血管疾患、心房細動、脳卒中、肝疾患ほか)、収入、手術前1年以内の入院歴など〕を調整後も、COPD群は有意にハイリスクだった〔術後30日間はハザード比(HR)1.32(95%信頼区間1.28~1.37)、1年間ではHR1.26(同1.24~1.29)〕。また、COPD患者は術後の医療コストも高額であり、その差は30日以内よりも1年以内で比較した場合により大きかった〔前記の交絡因子調整後の相対差が術後30日間は2.1%(1.8~2.3)、1年間では9.8%(9.3~10.3)〕。

 この研究報告に関連して米ノースウェル・ヘルスのMangala Narasimhan氏は、まず臨床医に向けて、「手術の必要性をよく考慮し、かつ、合併症のリスクが高いことを含む十分な情報に基づいて、患者が意思を決定できるように努める必要がある」と語っている。そしてCOPD患者に向けては、「第一に喫煙しないことだ。喫煙は将来のさまざまなリスクを高める。現在喫煙している場合は、できるだけ早く禁煙してほしい。人生の後半になってから禁煙したとしても、間違いなく何らかの利益を得ることができる」とアドバイスを送っている。

 また同氏は、「リスクのない手術はない。もちろんハイリスクであっても避けられない手術もあるが、その必要性を自分自身で理解するべきだ。さらに、大手術が必要となった場合には、手術前に健康上の問題を管理し、病状を最適化しておくことが重要」とも付け加えている。

[2023年1月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら