配偶者がいたり、独身であっても同居しているパートナーがいる人は、一人暮らしの人より、血糖値の平均値を表す検査値であるHbA1cが有意に低いとする論文が発表された。ルクセンブルク大学(ルクセンブルク)のKatherine Ford氏とオタワ大学(カナダ)のAnnie Robitaille氏が、糖尿病と診断されていない人を対象に行った研究の結果であり、「BMJ Open Diabetes Research & Care」に2月6日掲載された。なお、パートナーがいる人において、相手との関係がうまくいっているか否かの違いは、HbA1cに関連がないという。
この研究は、英国の中高年者を対象に行われている、加齢に関する縦断研究(ELSA研究)のデータを用いて行われた。ELSA研究の第2波(2004/05年)に登録された9,432人から、50歳未満または89歳以上の人、糖尿病または糖尿病前症に該当すると自己申告した人、HbA1cや婚姻状況の記録がない人、2008/09年や2012/13年の追跡調査に参加しなかった人を除外して、3,335人を解析対象とした。なお、研究参加時点で結婚または同居していると回答した人に対しては、パートナーとの関係についての複数の質問を行い、相手との関係が良好か否かを評価した。
HbA1cは、パートナーがいる群が5.47±0.53%、いない群は5.52±0.49%であり、後者の方が有意に高かった(P=0.006)。また、パートナーがいない群には女性が多く(51対72%)、高齢であり(63.0±7.5対67.5±9.3歳)、非就労者や喫煙習慣のある人、抑うつ傾向のある人が多くて、運動習慣のある人は少ないといった有意差が認められた。BMIには有意差がなかった。
HbA1cに影響を及ぼし得る因子(年齢、BMI、喫煙・運動習慣、収入、家族や友人の存在など)を調整後、パートナーあり群のHbA1cはなし群に比べて-0.21%(95%信頼区間-0.31~-0.10)であり、有意に低いことが明らかになった。一方、パートナーあり群において、相手と親密な関係にあることは、HbA1cに有意な影響を及ぼしていなかった。また、反対にパートナーと緊張した関係にある場合も、年齢の影響のみを調整した解析ではHbA1cが+0.04%(同0.01~0.07)の有意差があったが、前記の因子を全て調整した場合は有意性が消失した。
本研究で示された、パートナーの有無でHbA1cが0.21%異なることの公衆衛生上のインパクトについて、論文中には、「一般人口においてHbA1cが0.2%低下した場合、超過死亡が25%減少することが、ほかの研究から示されている」と記されている。ただし本研究では、追跡期間中の糖尿病の新規発症リスクと婚姻状況との有意な関連は認められなかったという。
以上の結果を総括して著者らは、「離婚や死別によってパートナーを失った高齢者へのサポートを強化することが、健康上のリスク、より具体的には血糖値の上昇を防ぐための起点となる可能性がある」と述べている。
[2023年2月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら