営利目的のホスピスで終末期を過ごす患者は、非営利目的のホスピスで過ごす患者に比べて受けるケアの質が格段に劣ることが、新たな研究で報告された。米ランド研究所のRebecca Anhang Price氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Internal Medicine」に2月27日掲載された。
ホスピスケアは死期の迫った患者とその家族の生活の質(QOL)の向上に焦点を当てるもので、患者の余命が6カ月以下と予想される場合に適格とされる。ホスピスの多くは地域ベースで自発的に始まったサービスであったが、営利目的のホスピスの数は、2000年以降20年で5倍以上に増えた。また、ホスピス全体に営利目的のホスピスが占める割合も、2000年の約30%から2020年には73%となっている。以前の研究では、営利目的のホスピスは非営利目的のホスピスに比べ、スタッフの数が少ない点や技能が低い点などが指摘されている。
ランド研究所の研究グループは、2017年4月から2019年3月の間に全米3,107カ所のホスピスで過ごした患者の家族介護者65万3,208人を対象に実施された調査結果を用いて、ホスピスが営利的か非営利的かの違いが、提供するケアの質に関連するのかを検討した。
ホスピスケアは、在宅をベースにしたケアから、入院先や介護施設でのケアまで、あらゆるタイプのものを対象とし、その質を8つの指標で評価した。8つの指標とは、ホスピスチームのコミュニケーション、時宜にかなったケアの提供、患者家族への敬意ある対応、感情面および宗教面でのサポート、症状の管理、家族介護者へのホスピスケアに関する訓練の実施、ホスピスに対する評価、他者への推奨度、であり、そのサマリースコアと全国の平均スコアとの差により仕事の質を「低い」「平均的」「高い」とした。
患者の死亡時の平均年齢は82.8歳で、非営利目的のホスピスと営利目的のホスピスとの間で同様だった。営利目的のホスピスに対する家族介護者の評価は、8つのいずれの指標でも非営利目的のホスピスよりも低かった。8つの指標のサマリースコアで「仕事の質が低い」とされたホスピスの割合は、営利目的のホスピスで31.1%(548/1,761カ所)だったのに対して、非営利目的のホスピスでは12.5%(113/906カ所)にとどまっていた。一方で、「仕事の質が高い」と評価されたホスピスは、営利目的のホスピスで21.9%(386/1,761カ所)、非営利目的のホスピスで33.7%(305/906カ所)だった。
研究論文の筆頭著者であるAnhang Price氏は、「この結果は、ホスピスが運営されている地域や患者のタイプによって説明することはできない」と述べ、「営利目的のホスピスが急増していることから、これは差し迫った問題である」と警鐘を鳴らす。
ただし、ケアの質には大きなばらつきがあり、全国平均を上回るスコアの営利目的のホスピスもあった。Anhang Price氏は、「営利目的のホスピスであれば、必ずケアの質が悪いということではない」と述べ、「ホスピスを選ぶ際には、比較サイトで地域のホスピスの品質指標を確認することも可能だ」と助言している。
なお今回の研究は、米メディケア・メディケイド・サービスセンターによる支援を受けて実施された。
[2023年2月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら