糖尿病患者への血糖降下薬、降圧薬、脂質低下薬の長期的な継続使用に関する研究結果が報告され、それらの薬剤の処方が開始された後に中断される患者が少なくないという実態が明らかになった。米エモリー大学のPuneet Kaur Chehal氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に1月30日掲載された。脂質低下薬については患者の43.3%で、処方の中断が認められたという。
近年行われた大規模スタディによって、糖尿病の血管合併症の発症・進展抑止には、血糖値だけでなく、血圧や血清脂質も厳格に管理することが重要であることが明らかになった。そのため、糖尿病患者に対しては血糖降下薬だけでなく、降圧薬や脂質低下薬など、複数の薬剤が必要とされることが増えてきている。それらの薬剤をアウトカム改善につなげるためには、長期間継続的に使用することが重要と考えられるが、処方開始後に中断されるケースも実際には少なくない。ただしその実態は明らかでない。
Chehal氏らは、米国医療研究品質局(AHRQ)の医療費パネル調査の2005~2019年のデータを用いた連続横断研究によって、それら薬剤の処方状況を検討した。2年間連続で処方されていた場合を「継続使用」と定義、処方が中断されたり再開されたりしていた場合を「一貫性のない使用」と定義した。解析対象は1万5,237人の糖尿病患者で、うち約半数(47.4%)は45~64歳、54.2%が女性だった。
解析対象期間全体で、血糖降下薬については19.5%(95%信頼区間18.6~20.3)で、継続使用されていない状況が確認された。また、降圧薬に関しては17.1%(同16.2~18.1)、脂質低下薬に関しては43.3%(42.2~44.3)で処方の中断が認められた。
経年的な変化に着目すると、2005~2006年に血糖降下薬が継続使用されていた患者は84.5%(81.8~87.3)であったのに対して、2018~2019年はその割合が77.4%(74.8~80.1)へと低下していた。一方で、血糖降下薬の一貫性のない使用の割合は、3.3%(1.9~4.7)から7.1%(5.6~8.6)へと増加し、また、血糖降下薬が使用されていない患者も8.1%(6.0~10.1)から12.9%(10.9~14.9)へと増加していた。降圧薬の一貫性のない使用は、3.9%(1.8~6.0)から9.0%(7.0~11.0)へと増加。脂質低下薬については2017~2018年に一貫性のない使用の割合が最も増え9.9%(7.0~12.7)に上り、ほぼ10人に1人の糖尿病患者に対して処方の中断や再開が行われていた。
サブグループ解析からは、女性患者は男性患者に比べて、血糖降下薬〔オッズ比(OR)1.23(1.06~1.42)〕や脂質低下薬〔OR1.25(1.13~1.39)〕が使用されないケースが有意に多いことが示された。
著者らは、「成人2型糖尿病患者に対しては、細小血管障害と大血管障害のリスク因子に対する包括的な長期間の介入がガイドラインで推奨されているにもかかわらず、われわれの研究結果はそれが行われていない患者の存在を示している」と述べている。
なお、数人の著者がメルク社を含む製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。また、本研究の研究資金の一部は、メルク社からエモリー大学への助成金が充てられた。
[2023年1月30日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら