慢性的鉄欠乏児、介入による血清フェリチン値改善後も認知スコアは低い

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2023/05/03

 

 慢性的な鉄欠乏症の児は、介入により血清フェリチン値が改善しても、鉄が充足している児と比べて介入後12カ月時点でも認知スコアは低いままである、という研究結果が「Pediatrics」2022年12月号に発表された。

 トロント大学(カナダ)Dalla Lana School of Public HealthのArgie Gingoyon氏らは、ヘモグロビンとフェリチンをスクリーニングに用い、最終的に生後12カ月から40カ月の乳幼児116人を対象に、慢性的な鉄欠乏と認知スコアとの関連を検討する前向き観察研究を実施した。対象とした児全員の保護者には食事に関する指示を与え、鉄の充足状態に応じて児に経口鉄剤を投与した。

 ベースライン時点でヘモグロビン110g/L未満かつフェリチン14μg/L未満であった児(鉄欠乏性貧血)、およびヘモグロビン110g/L以上かつフェリチン14μg/L未満の状態がベースラインから4カ月時点まで継続した児(非貧血性鉄欠乏症)を慢性的鉄欠乏症群(41人)とした。また、ベースライン時点でヘモグロビン110g/L以上かつフェリチン14μg/L以上であった児、および4カ月時点で非貧血性鉄欠乏症の基準を脱した児を鉄充足群(75人)とした。多変量線形回帰モデルを使用して両群を比較検討した。

 運動発達および認知発達の程度を評価するMullen Scales of Early Learningを用い、Early Learning複合スコアの平均値の群間差を見たところ、介入後4カ月時点では-6.35ポイント(95%信頼区間-12.4~-0.3)で欠乏群の方が有意に低く(P=0.04)、12カ月時点においても-7.35ポイント(同-14.0~-0.8)で同様に欠乏群の方が有意に低かった(P=0.03)。フェリチンの平均値の群間差は、4カ月時点では14.3μg/Lで欠乏群の方が有意に高かったが(P=0.03)、12カ月時点には有意差は消失した。ヘモグロビンの平均値には、4カ月時点でも12カ月時点でも有意差は認められなかった。

 以上から著者らは、「フェリチン平均値については、介入後12カ月時点では両群間に差は見られなかった。ヘモグロビン平均値については、介入後4カ月および12カ月のいずれの時点においても両群間に差は見られなかった」とし、「このようにフェリチンとヘモグロビンの平均値には両群間で差が見られなかったにもかかわらず、認知機能の差は依然として認められた。鉄欠乏の早期発見の指標としてフェリチンを用いる方法は、今後の研究で見直す必要があるのではないか」と述べている。

[2022年11月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら