n-3系脂肪酸を含む一部の微量栄養素には心血管リスクの抑制効果があると考えられることが、「Journal of the American College of Cardiology」12月号に掲載された論文で明らかにされた。
中国農業大学(中国)のPeng An氏らは、微量栄養素が心血管疾患(CVD)のリスク因子およびCVDイベントに及ぼす影響を検討したランダム化比較対照試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタアナリシスを実施した。
PubMed、Web of ScienceおよびEmbaseのデータベースを検索し、2022年5月1日までに発表され、抗酸化作用のある微量栄養素とCVDリスク因子およびCVDイベントとの関連を検討している884件のRCTを抽出した。これらのRCTで評価された微量栄養素は計27種類、参加者の合計は88万3,627人(489万5,544人年)であった。
n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸、L-アルギニン、L-シトルリン、葉酸、ビタミンD、マグネシウム、亜鉛、α-リポ酸、コエンザイムQ10、メラトニン、カテキン、クルクミン、フラバノール、ゲニステイン、およびケルセチンの摂取によるCVDリスク因子の低減に関するエビデンスレベルは「中」~「高」であった。
微量栄養素ごとの評価では、n-3系脂肪酸の摂取(摂取量の中央値1.8g/日、摂取量の範囲0.27~5.5g/日)により、CVDによる死亡〔相対リスク(RR)0.93、95%信頼区間(CI)0.88~0.97〕、心筋梗塞(同0.85、0.78~0.92)、および冠動脈疾患イベント(同0.86、0.80~0.93)のリスクが低下した。葉酸の摂取(中央値3mg/日、範囲0.5~15mg/日)により脳卒中のリスクが低下し(RR 0.84、95%CI 0.72~0.97)、コエンザイムQ10の摂取(中央値50mg/日、範囲33.3~100mg/日)により全死亡イベントのリスクが低下した(同0.68、0.49~0.94)。
その一方で、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEおよびセレンは、CVDおよび2型糖尿病のリスクに影響を及ぼさなかった。β-カロテンの摂取(中央値20mg/日、範囲6~50mg/日)により、全死亡(RR 1.10、95%CI 1.05~1.15)、CVDによる死亡イベント(同1.12、1.06~1.18)、および脳卒中(同1.09、1.01~1.17)のリスクが上昇した。
著者らは、「心血管の健康を促進・維持するためには、自然食品をベースとした食事で多種多様な微量栄養素を摂取することによって、微量栄養素の有益性とリスクのバランスをとることが重要であることが、本稿のエビデンスマップで明確になった。これを世界規模で実践するためには、食文化に応じた取り組みが必要となるのではないか」と述べている。
なお、2名の著者が、ある製薬企業および栄養関連企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。
[2022年12月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら