閉塞性睡眠時無呼吸は脳の状態を悪化させる可能性

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)による睡眠の質の低下は、高齢者の脳の状態を悪化させる可能性のあることが、OSA患者を対象に脳の画像検査を実施した研究で示唆された。米メイヨー・クリニック睡眠医学センターのDiego Carvalho氏らが実施したこの研究の詳細は、「Neurology」に5月10日掲載された。
睡眠時無呼吸は、空気の通り道である上気道が狭くなって生じるOSAと、呼吸中枢の異常により生じる中枢性睡眠時無呼吸(CSA)に大別される。Carvalho氏によると、睡眠時無呼吸は、高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、認知障害、認知症のリスク上昇に関連していることが指摘されている。また、血圧や心拍数の上昇、酸素レベルの低下、中途覚醒などをもたらし、さまざまな面で脳に有害な影響が及ぶことも分かっているという。
重要なことは、睡眠時無呼吸が、「深い眠り」に入り、それを維持することを妨げる原因となり得る点だ。米クリーブランド・クリニックの情報によると、深い眠りは入眠の約1時間後に始まり、体の細胞の修復や再生、免疫システムの強化、骨や筋肉を作るのに不可欠である。したがって、深い眠りの時間を十分に取っているかどうかは、睡眠の質の程度を示す指標の一つとして考えられている。
Carvalho氏らは今回、睡眠時無呼吸による深い眠りへの影響が、長期的な脳卒中や認知症、アルツハイマー病のリスクに関係しているのかどうかを明らかにするための研究に着手した。対象は、研究開始時に認知症やアルツハイマー病がなく、思考処理に問題がない軽症~重症のOSA患者140人(平均年齢72.7±9.6歳)。いずれの患者もMRIによる1回以上の脳スキャンと、睡眠実験室で一晩かけて睡眠の観察〔終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)〕を受けた。
脳スキャンを行うことで、主に神経線維で構成されている白質と呼ばれる脳領域の健康状態を知ることができる。白質に損傷があると、脳の他の領域とのコミュニケーションがうまく取れなくなる可能性がある。こうした損傷は、小さな病変として現れ、加齢に伴い蓄積していく。また、一晩かけてPSGを行うことで、研究参加者の睡眠パターンを追跡することができる。
Carvalho氏らは、参加者の脳スキャンから得られたデータとPSGにより明らかになった睡眠パターンを分析した。その結果、深い眠りについている時間が最も短い患者、つまり全般的な睡眠の質が最も低い患者では、脳の白質の損傷が最も多く認められることが分かった。具体的には、深い睡眠の時間が占める割合が10ポイント低下するごとに、2.3年分の老化に相当する白質の損傷が蓄積することが示された。
Carvalho氏は、「重度のOSA、あるいは深い眠りが不十分であることに起因した睡眠の質の低下は、認知障害や認知症、脳卒中のリスクを高めると考えられている白質の損傷に関与している可能性がある」と言う。ただし、今回の研究で深い眠りの時間が短いほど白質の損傷が多く認められるという関連性が確認されたのは重症のOSA患者のみであり、より軽症の患者ではこの関連性は認められなかったことから、研究グループは結果の慎重な解釈を求めている。また実際に、睡眠の質の低下が原因で認知機能の低下や脳卒中などが起こることが証明されたわけではなく、あくまでもそれらのリスク上昇に関係する白質の損傷に睡眠の質の低下が関連していることが示されたに過ぎない点についても、強調している。
本研究報告を受け、英キングス・カレッジ・ロンドンのIvana Rosenzweig氏は、「睡眠時無呼吸は体のほとんどの臓器と脳に影響を与える深刻な公衆衛生上の問題である。深い眠りが記憶にどのような影響を与えるのかについては今のところ明確には示されていないが、数多くの研究で、通常の加齢に伴い深い眠りの時間が減り、記憶力に関わる問題が増えるという強い関連性が示されている」と説明。その上で、Carvalho氏らの研究について、「われわれの認知症への取り組みにおいて、睡眠の質の重要性についての認識を高めることにつながるという点で、こうした研究は重要だ」と述べている。
[2023年5月11日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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