シフト勤務による健康への影響は男性に強く生じる可能性

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/06/23

 

 就労時間帯が変化するシフト勤務によって生じる体への負担は、女性よりも男性で大きい可能性が報告された。米ペンシルベニア大学ペレルマン医学部のGarret FitzGerald氏らの研究によるもので、詳細は「Science Translational Medicine」に5月17日掲載された。

 FitzGerald氏らの研究は、実験用マウスと人間を対象とした二つのパートから成る。まずマウスを用いた研究では、昼夜のサイクルを変化させて飼育すると、オスでは血圧、腸内細菌叢、遺伝子の発現など、さまざまな評価指標に大きな混乱が認められた。対照的にメスのマウスは、そのような変化が少なかった。

 続いて、英国の大規模ヘルスケアデータベース「UKバイオバンク」に登録されている9万人以上のデータを解析したところ、シフト勤務の男性の3分の1がメタボリックシンドローム(MetS)に該当していたのに対して、シフト勤務でない男性ではその割合が4分の1強だった。女性の場合、職業の違いを考慮しない解析ではシフト勤務者のMetS有病率が高かったが、職業の影響を調整すると、そのリスク差は抑制された。

 FitzGerald氏は、「これらの結果は、シフト勤務が健康に与える影響は男性より女性の方が小さい可能性を示唆するものだ。ただし、その理由はまだ明らかでない」と話している。一つの可能性として、女性ホルモン(エストロゲン)による保護作用が関係していることが考えられる。実際にマウスの実験では、卵巣を切除したメスは昼夜のサイクルを変化させた際に、評価指標への影響が大きく現れる傾向があった。ただし、それでも依然としてオスマウスに比べれば乱れが少なかったことから、女性ホルモンの有無だけが理由ではないと考えられた。

 過去の研究では、シフト勤務と高血圧、糖尿病、心臓病、その他の疾患のリスク増大の関連が示されている。昼夜が逆転することによる体への直接的な負担だけでなく、シフト勤務では運動のための時間を確保しにくくなったり、健康的な食事を続けることが難しくなったりすることが関係しているものと推測されている。人間の概日リズム(1日24時間周期の生理活動)は日中に活動して食事を取り、暗くなると眠るようにプログラムされている。シフト勤務はその概日リズムを狂わせるように働く。そして、これまでに行われた研究の一部は、女性のシフト勤務者は男性のシフト勤務者よりも、このようなリズムの乱れへの耐性が強いことを示唆しており、例えばMetSや糖尿病の罹患率の差として報告されている。

 今回の報告に関して、本研究に関与していない米ノースウェスタン大学フェインバーグ医学部のSabra Abbott氏は、「示された結果を『女性はシフト勤務を行っても害にならない』とは解釈してほしくない」と話す。また、「この研究の着眼点は興味深いものだが、データは慎重に解釈する必要があるし、メカニズムの解明も求められる」と付け加えている。

 FitzGerald氏も、「シフト勤務と疾患リスクとの関係という問題は、性差以外に勤務形態、教育歴、収入など、数々の考慮すべき因子があって、解釈が難しい」と述べている。その上で、「人々がシフト勤務の健康に対する潜在的なリスクを理解し、睡眠衛生の重要性を認識すべき。なるべく日中は日光を浴びて、夜は人工の光を避けた方が良い」とアドバイスしている。

[2023年5月17日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら