治療抵抗性高血圧の有病率は意外に高い

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/07/25

 

 高血圧患者の10人に1人近くが見かけ上の治療抵抗性高血圧(apparent resistant hypertension;aRH)の基準を満たすが、aRHに対する治療は医療提供者により大きく異なることが、新たな研究で明らかにされた。米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のJoseph Ebinger氏らによる研究で、「Hypertension」に6月26日掲載された。

 Ebinger氏らは、3つの大規模なヘルスケアシステムの電子健康記録(EHR)を用いて、登録患者242万468人のデータを解析した。その結果、これらの患者の55.6%(134万3,489人)が高血圧の基準を満たし、そのうちの8.5%(11万3,992人)はaRHの基準も満たすことが明らかになった。また、これらのaRH患者は合併症を有していることが多く、特に、糖尿病や心不全の有病率が高いことも示された。さらに、血圧がコントロールされているaRH患者では、コントロール不良のaRH患者に比べて、β遮断薬、利尿薬、硝酸薬が処方されることが多く、特にミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の処方は、前者で35.4%、後者で10.4%と大きな差があることも判明した。

 Ebinger氏は、「aRHの有病率は、多くの人が想像するよりも高い。われわれの研究では、この高リスク集団に対する高血圧の治療法が、医療提供者により大きく異なることも明らかになった。このことは、aRHに対するケアを標準化する必要性を示している」と話す。

 さらにEbinger氏は、「この大規模データの解析からは、aRH患者では非治療抵抗性の高血圧患者と比べて、心血管系の有害事象の発症リスクが極めて高いことも示された」と述べ、「このような患者と患者の血圧を上昇させている原因を特定することが、ますます重要になっている」と話している。

 Ebinger氏によると、aRHの治療はその診断と同様、やっかいだという。実際、aRHにa(apparent;見かけ上の)という言葉が使われているのは、医師が、aRHの診断を下す前に患者の血圧が高い他の潜在的な原因を除外しなければならないからだ。例えば、服薬不遵守、不適切な薬剤選択、あるいは「白衣高血圧」とも呼ばれる、診察室での人為的な血圧上昇などがそうした潜在的な原因の例だ。

 Ebinger氏はこの研究の重要なポイントとして、医師に対しては、患者が血圧をコントロールするために4種類以上の降圧薬を服用している場合、高血圧の別の原因を考慮するか、専門医を紹介するよう助言している。また、患者に対しては、服薬遵守の方法や治療により起こり得る副作用への対処法を医療提供者と話し合うなど、複雑な疾患に対処する際には医療提供者に頼ることを勧めている。

[2023年6月26日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら