米国で、2022年後半に実施された2万6,000件以上の呼吸器系ウイルスの検査結果を調べたところ、陽性結果の1%以上で新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、RS(呼吸器合胞体)ウイルスの重複感染が認められたとする研究結果が報告された。重複感染は、21歳以下の若年者の間で多く認められたという。米クエスト・ダイアグノスティックス社のテクニカルディレクターを務めるGeorge Pratt氏らによるこの研究結果は、米国臨床化学会年次総会(2023 AACC、7月23〜27日、米アナハイム)で発表された。
Pratt氏は今回の研究背景について、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが終息に向かい始め、人々の行動様式が変化する中で、われわれは、他の呼吸器系ウイルスの再流行とそれらの重複感染、特に、再流行を見せている新型コロナウイルスとの重複感染の可能性を調査することが重要だと考えた」と説明する。
重複感染は、呼吸器系疾患のアウトブレイクが複数発生した場合に起こりやすい。例えば2022年後半に米国でRSウイルス感染症例が急増した際には、COVID-19のパンデミックと季節性インフルエンザの流行が重なった。Pratt氏らは、同時に複数の感染症に罹患した場合には、重症化や治療合併症のリスクが高まると指摘する。
今回の研究でPratt氏らは、2022年の秋に107日にわたって実施された2万6,657件の呼吸器系ウイルス(RSウイルス、新型コロナウイルス、A型・B型インフルエンザウイルス)の検査結果を収集して分析した。この中には、21歳以下の患者に対して実施された9,800件の検査の結果も含まれていた。
その結果、陽性結果の1.33%、全検査結果の0.55%で、2種類以上のウイルスの重複感染が認められることが明らかになった。重複感染率は感染しているウイルスにより異なり、成人では、新型コロナウイルスとRSウイルスの重複感染での0.38%から、A型インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの重複感染での2.28%までの幅があった。これに対して、21歳以下の若年者での重複感染率はいずれのウイルスの組み合わせでも成人より高く、新型コロナウイルスとA型インフルエンザウイルスの重複感染では6%に上った。
Pratt氏は、「本研究は、米国北東部で複数のウイルスについて同時に実施された大量の検査結果に基づいている点が斬新だ。2万6,000件以上の検査結果を調査できたことは、われわれにとって大きな財産となった」と述べる。
Pratt氏はさらに、「インフルエンザシーズンやその他の呼吸器系ウイルスの流行の経験を重ねていくことで、重複感染率に関するさらなるデータの蓄積が可能となる。今回の研究は、この先、重複感染率が減少するのか増加するのかを評価する際に役立つデータポイントになることだろう」との考えを示している。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
[2023年7月25日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら