高血圧のコントロールは、夏よりも冬の方が難しくなるようだ。6万人以上の成人高血圧患者のデータを分析した結果、冬には夏よりも収縮期血圧(上の血圧)が最大で1.7mmHg上昇することが明らかになった。米国医師会のソフトウェアエンジニアであるRobert Barrett氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会(AHA)の高血圧学術集会(Hypertension 2023 Scientific Sessions、9月7〜10日、米ボストン)で発表された。
AHAの2023年の統計情報によると、米国の成人の半数近くが高血圧を持っている。過去の研究では、血圧は季節により変動し、変動のほとんどは収縮期血圧で認められたことが示されている。
Barrett氏らは今回の研究で、2018年7月から2023年6月の間に米国南東部および中西部の規模がさまざまな6カ所の医療センターで高血圧の治療を受けた患者6万676人の電子健康記録(EHR)をレビューし、血圧コントロール(140/90mmHg未満の達成と定義)が夏(6〜8月)と冬(12〜2月)により変わるのかどうかを検討した。対象患者は平均年齢が62歳で、52.3%が白人、59.7%が女性であり、観察期間を通じて処方された降圧薬を服用していた。
分析の結果、冬には夏に比べて対象患者の収縮期血圧が最大で1.7mmHg上昇することが明らかになった。また、冬の血圧コントロール率は、夏よりも最大で5%低くなることも示された。
Barrett氏は、「先行研究で示された血圧の季節による変動に比べると、今回の研究で示された変動の幅は小さかった。しかし、血圧コントロール率は夏と冬で大きく異なることが示され、われわれは驚いた」と話す。同氏は、「高血圧患者や血圧が高めの人は、季節による血圧の変動が及ぼす悪影響を軽減するために、冬には定期的に血圧モニタリングを行うとともに、運動や栄養摂取状況を改善することが有益かもしれない」とAHAのニュースリリースで述べている。
Barrett氏らは、今回の研究の限界点として、EHRに対象患者の完全な健康記録が記されていなかった点を挙げている。また、今後の研究で、季節による心疾患の発症率や死亡率の違いについて検討する可能性に言及している。
なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。
[2023年9月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら