冠動脈心疾患(CHD)の既往のある高齢者におけるリポ蛋白(a)(Lpa)濃度の上昇は、CHD再発の予測因子であるという研究結果が、「Current Medical Research and Opinion」に6月12日掲載された論文で明らかにされた。
Lpaは、LDLの一部で、線溶因子であるプラスミノーゲンと相同性があるため、プラスミノーゲンと競合してその働きを阻害することによって動脈硬化を促進すると考えられている。LpaはCHDと死亡率の原因因子としてLDLと同等である可能性が示唆されている。Lpa濃度の上昇は、動脈硬化性心血管疾患および大動脈疾患の発症に関与することが明らかにされているが、CHD再発のリスク因子であるかどうかは明らかにされていない。そこで、ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)のLeon A. Simons氏および St. Vincent’s Hospital(オーストラリア)のJudith Simons氏は、オーストラリアのダボで1930年以前に生まれた高齢者を対象に、Lpa濃度の上昇とCHD再発との関連を調べる縦断的研究を実施した。
CHDの既往がある607例(平均年齢71歳、男性54%)を16年間追跡した。ベースライン時(1988~1989年)に脂質やその他のCHDリスク因子の検査を実施した。Cox比例ハザードモデルを用いて、Lpa濃度がCHDイベント再発の独立した寄与因子であるかどうかを評価した。
16年間の追跡期間中にCHDを再発した参加者は399例であった。CHD再発例のLpa濃度の中央値は130mg/L(四分位範囲60~315)、非再発例では105mg/L(同45~250)で、再発例の方が有意に高かった(Mann-WhitneyのU検定のP<0.07)。Lpa濃度が300mg/L以上の参加者の割合は、CHD再発例で26%、非再発例で19%と再発例の方が高く、Lpaが500mg/L以上の参加者の割合も、再発例で18%、非再発例で8%と再発例の方が高かった。
Lpa濃度の第1五分位(50mg/L未満)を基準とした場合、第5五分位(355mg/L以上)におけるCHD再発のハザード比(HR)は1.53〔95%信頼区間(CI)1.11~2.11、P=0.01〕であったことから、Lpa濃度の第5五分位はCHD再発の有意な予測因子であることが示された。その他のリスク因子(Lpa濃度の第5五分位を除く五分位数、年齢、性別など)は、CHD再発の有意な予測因子ではなかった。
Lpa濃度500mg/L未満を基準とした場合、500mg/L以上はCHD再発の有意な予測因子であった(HR 1.59、95%CI 1.16~2.17、P=0.004)。Lpa濃度300mg/L未満を基準とした場合、300mg/L以上はCHD再発の有意な予測因子であった(HR 1.37、95%CI 1.09~1.73、P=0.007)。
著者は、「本研究の結果は、Lpa濃度高値を改善することを目的として開発中の新規治療法が、CHD再発の予防に有効である可能性を示唆している。しかし、この治療法の潜在的な臨床効果はまだ確認できていない」と述べている。
なお、ノバルティスファーマは、本研究の解析を支援するために教育助成金を提供した。一名の著者は、脂質降下薬の製造会社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。
[2023年6月14日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら