小児が高齢者と比べて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が軽症で済みやすい理由は鼻の中の細胞にあることが、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)グレート・オーモンド・ストリート小児健康研究所のClaire Smith氏らの研究で示唆された。12歳未満の小児では、鼻腔内の上皮細胞(鼻粘膜上皮細胞)が新型コロナウイルスに対して迅速に免疫反応を示すのに対し、高齢者ではそのような迅速な免疫反応は起こりにくいことが実験で確認されたという。この研究結果は、「Nature Microbiology」に4月15日掲載された。
Smith氏らによると、こうした免疫反応の亢進は、鼻粘膜上皮細胞とともに存在する免疫細胞を除去した場合にも認められたという。論文の共著者で、UCL医学部の呼吸器専門医であるMarko Nikolic氏は、「興味深いことに、鼻から採取した標本に含まれる免疫細胞を除去し、培養皿で鼻粘膜上皮細胞のみを培養した場合でも、小児と高齢者の間で新型コロナウイルスに対する反応に違いが認められた。このことは、一般的に小児はCOVID-19に罹患しても重症化しにくいことの説明となり得る」と話す。
この研究でSmith氏らは、健康な12歳未満の小児、30~50歳の成人、70歳超の高齢者の鼻腔から採取した鼻粘膜上皮細胞を培養し、それを新型コロナウイルスに曝露させて反応を調べた。
3日後、小児の鼻粘膜上皮細胞では、侵入してきたウイルスに対する初期の防御反応としてインターフェロンが産生され、速やかに新型コロナウイルスに反応することが確認された。インターフェロンには、周囲の細胞のウイルスに対する防御力を高め、免疫防御力を強化する働きがある。
しかし、このような速やかな抗ウイルス反応は、加齢に伴い減弱していくことも示された。高齢者の鼻粘膜上皮細胞では、感染性のあるウイルス粒子がより多く作られる傾向が認められ、それによってウイルスの全身への拡散が促されていることが示唆された。
Smith氏らは、小児の鼻粘膜上皮細胞の抗ウイルス反応の強さは、小児がCOVID-19に罹患しても症状が軽いことの説明になるとの見方を示している。一方、高齢者の鼻粘膜上皮細胞ではダメージが大きく、ウイルスの複製が促されていることから、これが高齢者のCOVID-19重症化リスクが高い理由の一つである可能性も考えられるという。
Smith氏は、「今回の研究から、加齢に伴い鼻粘膜上皮細胞がどのように変化し、それが新型コロナウイルスと闘う能力にどのように影響を与えるのかが明らかになった」とニュースリリースの中で説明。また、「この知見は、年齢層ごとの、特にCOVID-19の重症化リスクが高い高齢者に対する効果的な抗ウイルス療法を開発する上で極めて重要だ」と付け加えている。
さらにSmith氏らは、今後の研究でCOVID-19以外のウイルス感染症についても加齢が体の防御反応にどのように影響を与えるのかを検討すべきだとの見解を示している。
[2024年4月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら