米疾病対策センター(CDC)による新たな研究から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のために入院した5歳未満の子どもが他の呼吸器感染症に重複感染すると、重症化リスクが高くなることが明らかになった。5歳以上では有意なリスク上昇は認められないという。
子どもに多い呼吸器感染症の原因として、ライノウイルス、エンテロウイルス、RSウイルスなどがあり、これらは一般に「風邪」として扱われる。COVID-19パンデミックとともに、マスク着用、身体的距離の確保をはじめとする厳格な対策が実施されたことで、これらの感染症も一時は減少し、ほとんど患者が見られなくなったものもある。しかし規制緩和によって再び増加し、米国では通常のシーズン以上にRSウイルスの感染が拡大。子どもたちが、COVID-19とそれらのウイルス感染症に重複して罹患する可能性が高まっている。
米国内14の州でCDCが実施している、COVID-19関連の入院に関するサーベイランス「COVID-NET」の研究メンバーであるNickolas Agathis氏らは、COVID-NETのデータを利用して重複感染した子どもの転帰を検討。その結果の詳細が、「Pediatrics」に1月18日掲載された。それによると、COVID-19のために入院した5歳未満の子どもが他の呼吸器感染症ウイルスにも感染していた場合、重症化(ICU入室または機械的人工換気を要する)リスクが2倍以上に上昇することが分かったという。
小児感染症の専門家によると、この結果はパンデミック発生以来2年間の臨床での印象と一致しているが、今は少し事情が異なるとのことだ。その理由は主として、パンデミック初期にほとんど見られなかったインフルエンザの流行が始まったことだという。そのように語る専門家の1人、米マサチューセッツ総合病院で小児感染症部門のディレクターを務め、米国感染症学会(IDSA)のスポークスパーソンであるVandana Madhavan氏は、「この季節になってもまだRSウイルスの子どもが受診することがあり、COVID-19と重複感染する子どももいる。インフルエンザやその他のウイルスの感染症、または細菌感染症も増えてきた」と状況を説明する。
Agathis氏らが研究に用いたCOVID-NETには、2020年3月~2022年2月に18歳未満のCOVID-19による入院患者が4,372人記録されていた。このうちの62%に対してCOVID-19以外の呼吸器感染症の検査が行われており、その21%が何らかの検査で陽性と判定された重複感染だった。ICU入室を要したのは、重複感染群では37.8%、COVID-19単独感染群では26.9%、機械的人工換気を要したのは同順に10.2%、5.7%であり、いずれも重複感染群の方が有意に多かった(いずれもP<0.001)。
重症化リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種/民族、BMI、基礎疾患、未熟児で生まれた2歳未満の幼児、ワクチン接種状況など)を調整後、5~17歳では、重複感染群の重症化リスクはCOVID-19単独感染群と有意差がなかった。それに対して5歳未満の重複感染群では、COVID-19単独感染群よりも重症化リスクが有意に高いことが示された〔2歳未満は調整オッズ比(aOR)2.1(95%信頼区間1.5~3.0)、2~4歳はaOR1.9(同1.2~3.1)〕。
この研究報告について、米ルーリー小児病院の感染症専門医であるWilliam Muller氏は、「5歳未満の重複感染患児の重症化が、どのウイルスによって引き起こされるのかを特定することは困難だ。ただし、対策は単純明快である」と語る。その対策とは、「COVID-19と毎年のインフルエンザの予防接種を受けることだ。どちらも生後6カ月以上なら接種でき、重症化リスクを大幅に抑制する」と解説。また、Muller氏とMadhavan氏は、「1月中旬であっても、子どもたちがインフルエンザの予防接種を受けるのに遅すぎるということはない」と声をそろえる。なぜなら、インフルエンザは多くの場合、2月にピークを迎え、4~5月まで続くこともあるからだという。
[2023年1月18日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら