非心臓血管手術を受けるアテローム動脈硬化症患者は、心血管系に起因する心筋梗塞や死亡といった術後の心イベントリスクが高い。一方、術後30日のアウトカムにおけるスタチンの効果を評価するプラセボ対照試験は公表されていなかった。DECREASE IIIは、オランダ・エラスムス医療センターのOlaf Schouten氏らの研究グループによる、周術期スタチン療法が待機的血管手術患者で有害な心イベントの術後出現率を低下させるとの仮説を立証することを目的に行われたプラセボ対照試験。その結果が、NEJM誌2009年9月3日号に掲載された。
徐放性フルバスタチンとプラセボを二重盲検
二重盲検プラセボ対照臨床試験では、これまでスタチンの投与を受けたことのない患者を、ベータ受容体遮断薬に加えて、徐放性フルバスタチン(extended-release fluvastatin)80mgまたはプラセボのどちらかを、血管手術を受ける前に1日1回投与されるようランダムに割り付けた。そして脂質濃度、インターロイキン6濃度、C反応性蛋白(CRP)濃度が、ランダム化の際と手術前に測定された。
主要エンドポイントは、術後30日以内の一過性の心電図異常、トロポニンTの放出、またはその両方で定義される心筋虚血の発生とした。副次エンドポイントは、心血管系と心筋梗塞の複合による死亡。
計250例の患者がフルバスタチン、247例がプラセボに割り付けられた(中央値で血管手術37日前に投与)。
心血管系の有害イベントが有意に減少
総コレステロール、低比重リポ蛋白コレステロール、インターロイキン6、CRP濃度はフルバスタチン群で有意に低下したが、プラセボ群では変わらなかった。術後心筋虚血は、フルバスタチン群で27例(10.8%)、プラセボ群は47例(19.0%)で起こった(ハザード比:0.55、95%信頼区間:0.34~0.88、P=0.01)。
心血管系に起因する死亡または心筋梗塞は、フルバスタチン群が12例(4.8%)、プラセボ群が25例(10.1%)で起こった(同:0.47、0.24~0.94)、P=0.03)。フルバスタチン治療による有害事象の発生率に有意な増加はみられなかった。
これらの結果から研究グループは、血管手術を受ける患者に対する周術期フルバスタチン療法は、術後心疾患転帰改善との関連が確認できたと述べている。
(医療ライター:朝田哲明)