米国内科レジデント医を対象に行った調査で、疲労とストレスが増すにつれて、医療ミス増加につながることが明らかにされた。これまでの研究結果では、疲労とストレスを別々に分析した場合で、それぞれが医療ミス増加の原因になっていることは明らかになっていたが、両者を併せて分析した場合については明らかになっていなかった。調査を行ったのは、米国メイヨークリニックのColin P. West氏らで、JAMA誌2009年9月23/30日号で発表した。
レジデント380人を調査、139人が医療ミスを報告
West氏ら研究グループは、2003~2008年にかけて、430人の内科レジデントのうち380人を対象に年4回の調査を行った。調査では、医療ミスの自己報告と、生活の質(QOL)と疲労に関する線形視覚的自己評価、マスラック・バーンアウト尺度による疲弊度の評価、PRIME-MDうつ状態スクリーニング、エプワース眠気尺度による昼間の眠気の評価を行った。それぞれの調査の平均回答率は、67.5%だった。
医療ミスに関する回答を行ったのは被験者のうち356人(93.7%)で、うち139人(同回答者の39%)が調査期間中に医療ミスがあったと報告した。
米国内科レジデントの医療ミス増加は、疲労とストレスによる
医療ミスと眠気との関連について見てみたところ、エプワース眠気尺度が1ポイント増すごとに、医療ミスのリスクは1.10倍(95%信頼区間:1.03~1.16、p=0.002)になることがわかった。また、疲労度とでは、1ポイント増すごとに同リスクは1.14倍(同:1.08~1.21、p<0.001)だった。
バーンアウト尺度について見てみると、非人間的な対応をする「離人化」が1ポイント増すごとに同リスクは1.09倍(同:1.05~1.12、p<0.001)、「情緒的疲弊」が1ポイント増すごとに同リスクは1.06倍(同:1.04~1.08、p<0.001)に、それぞれ増加した。
スクリーニングで「うつ状態」であった人は、医療ミスリスクが2.56倍(95%信頼区間:1.76~3.72、p<0.001)にも増加した。
一方、「低達成感」との関連では1ポイント増すごとに同リスクは0.94倍低下、QOLとの関連でも0.84倍低下するとの結果が示された。
疲労度とストレスを示す項目については、両者を同時に分析した場合でも、ほとんどの項目で医療ミスの有意な増加につながった。また、眠気とストレスを示す項目を、バーンアウトとうつ病で補正したうえで同時に分析した場合は、眠気が医療ミスの有意な増加につながる関連は示されなかった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)