季節性インフルエンザワクチンの効力は、種々の因子(接種される人の年齢や健康状態、同型であってもワクチン株のタイプと実際に流行したタイプの抗原性の違いなど)によって異なるのではと言われている。また、認可されているワクチンには不活化ワクチンと弱毒性ワクチンがあり、その違いによる効力の違いも言われている。そこで米国ミシガン大学公衆衛生校疫学部門のArnold S. Monto氏らは、不活化ワクチンと弱毒性ワクチンの効力の違いに関する調査を、2004~2005年インフルエンザシーズンより開始した。18~48歳の健康な男女を対象とする無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、本論は、調査4シーズン目で、インフルエンザA型(H3N2)ウイルスが流行した、2007~2008年期からの報告。NEJM誌2009年9月24日号掲載より。
2007~2008年期は、A型(H3N2)が大流行
調査は、2007年秋に試験ワクチンを接種し登録した1,952例(平均年齢23.3歳)を対象に行われた。インフルエンザ流行期は、2008年1~4月。流行ウイルスの型は、A型(H3N2)約90%、B型が約9%だった。
調査は、組織培養によるウイルス分離、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、もしくは両法の併用によって、ワクチンの絶対効果と相対効果を推定評価し行われた。
A型(H3N2)では、不活化ワクチンの相対効果が60%
結果、ワクチンの絶対効果は、不活化ワクチン68%(95%信頼区間:46~81)、弱毒性ワクチン36%(同:0~59)だった。
また、インフルエンザ発症例(ウイルス培養もしくはPCR法で確認された)は、不活化ワクチンを受けた被験者が、弱毒性ワクチンを受けた被験者の半分だった。
A型に対する絶対効果は、不活化ワクチンでは72%(同:49~84)だったのに対し、弱毒性ワクチンでは29%(同:-14~55)で、不活化ワクチンの相対効果は60%(同:33~77)だった。
Monto氏は、「2007~2008期に最も罹患率の高かったA型(H3N2)に対しては、不活化ワクチンが予防に有効だった。弱毒性ワクチンも予防効果はあったが、不活化ワクチンよりも低かった」と結論している。
(医療ライター:武藤まき)