心突然死を含む死亡率は心筋梗塞後早期が最も高いが、現在のガイドラインでは、心突然死予防のための、心筋梗塞後40日以内の植え込み型除細動器(ICD)適応手術を推奨していない。ドイツ・ミュンヘン大学のGerhard Steinbeck氏らのIRIS試験グループは、ハイリスク患者にとっては早期ICD施行が、薬物治療のみを受けるよりも、より長期の生存をもたらすとの仮説を立て検証を行った。NEJM誌2009年10月8日号より。
心筋梗塞後早期の患者をICDと薬物治療に無作為割り付け
IRIS(Immediate Risk Stratification Improves Survival)試験は、任意の心筋梗塞患者62,944例が登録し行われた、無作為化前向きオープンラベル研究者主導型多施設共同試験。登録患者のうち、一定の臨床的な判定基準を満たした、イベント発生から5~31日後の患者898例を被験者として検討が行われた。判定基準は、1「左室駆出率が40%以下に低下、最初に得られた心電図の心拍数が90以上/分」(602例)、2「ホルター心電図での非持続性心室頻拍が150以上/分」(208例)、または「基準1と2の両基準を満たす」(88例)とされた。
被験者トータル898例のうち、445例をICD治療群に、453例を対照群として薬物治療単独群に無作為に割り付けた。
ICD治療群の総死亡率を低下させず
平均追跡期間は37ヵ月だった。この間に、233例の患者が死亡(ICD群116例、対照群117例)。ICD群の総死亡率は低下しなかった(ハザード比:1.04、95%信頼区間:0.81~1.35、P = 0.78)。ただし、心突然死についてはICD群が対照群より少なかった(27対60、ハザード比:0.55、95%信頼区間:0.31~1.00、P = 0.049)。しかし心突然死を除く死亡数は、ICD群のほうが多かった(68対39、1.92、1.29~2.84、P = 0.001)。またハザード比については、登録判定基準の分類3群(判定基準1、判定基準2、両方)とも同様だった。
研究グループは、急性心筋梗塞患者でリスク増加を伴う臨床像を示す患者への予防的ICD療法は、総死亡率を低下させないと結論づけている。
(医学ライター 朝田 哲明)