医師が深夜0時以降、手術に臨み執刀し、同日の日中に別の手術をした場合、深夜手術後の睡眠時間が6時間以下の場合には6時間超の場合に比べて、合併症発症リスクが約1.7倍に増大することが報告された。一方、睡眠時間を考慮に入れず勤務時間(12時間以上・未満で比較)だけで検討した場合の合併症リスクには有意差は見られなかったという。米国ボストンにあるブリガム&ウィメンズ病院
総合内科/プライマリ・ケア部門のJeffrey M. Rothschild氏らが、経験ある医師200人超を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2009年10月14日号で発表した。これまで、経験ある医師の労働時間や睡眠時間、患者の安全性について調べた研究結果は、ほとんどないという。
深夜手術後手術2,000件弱と対象例約7,500件を分析
研究グループは、1999~2008年にかけて、外科医86人と産婦人科医134人が執刀した手術について、後ろ向きコホート試験を行った。
試験の対象となった手術は、その同日深夜(午前0時~6時)に、別の成人患者の手術を行った後に実施したもので、外科手術が919件、産科手術が957件だった。
対照例として、同じ医師が日中のみ(深夜には行わず)執刀した手術について、1人の医師につき最大5件まで調べた。その合計は外科手術が3,552件、産科手術は3,945件だった。
睡眠6時間以下は合併症リスクが1.72倍、医師の通算勤務時間はリスク増大なし
その結果、手術の合併症発生件数は、深夜術後群が101件(5.4%)に対し、対照群が365件(4.9%)で、発症率に有意差はなかった(オッズ比:1.09、95%信頼区間:0.84~1.41)。
深夜術後群のうち、睡眠時間が6時間超だった場合の合併症発生件数は559件中19件(3.4%)だったのに対し、睡眠時間が6時間以下だった場合は1,317件中82件(6.2%)と、後者で合併症発生率は有意に高率だった(オッズ比:1.72、95%信頼区間:1.02~2.89)。
一方、試験対象の手術終了時の医師の通算勤務時間が12時間超の場合(958件)と12時間未満の場合(918件)についての比較では、合併症発生率はそれぞれ6.5%と4.3%で、有意差は見られなかったという(オッズ比:1.47、同:0.96~2.27)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)