末期腎疾患高齢患者への透析導入はADLの持続的な低下と強く関連

提供元:ケアネット

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公開日:2009/10/28

 



末期腎疾患高齢患者への透析導入は、日常生活動作を障害してしまうことが報告された。スタンフォード大学腎臓学部門のManjula Kurella Tamura氏らが、アメリカで末期腎疾患(ESRD)の高齢患者で透析導入が増えていることを受け、有益性を調べるために行った調査で明らかになった。透析開始後1年死亡率は、70歳以上では35%超、80歳以上では50%超とされる一方、延命効果やQOLへの効果は不確かなままであることが調査の背景にあった。NEJM誌2009年10月15日号より。

ナーシングホーム入所者の透析導入患者3,702人を調査




Tamura氏らは、全米ナーシングホーム入所者登録データとリンクした全米透析患者登録システム(USRDS)から、1998年6月~2000年10月の間に透析治療を開始し、透析開始前の機能状態が1つ以上測定できた被験者3,702人(年齢73.4±10.9歳、女性60%、白人64%)を選定し追跡調査を行った。

指標となった機能状態とは、7つの日常生活動作(食事、着替え、排泄、保清、歩行、椅子からの立ち上がり、ベッドでの体位変換)で、MDS-ADLスコアを用いて評価が行われた(評価スコア:0~28、スコアが高いほど機能低下が大きい)。

導入後3ヵ月も機能維持は39%、1年後には13%に低下、1年死亡率58%




MDS-ADLスコアは、透析導入前3ヵ月間は12点だった。しかし導入後3ヵ月間では16点になっていた。

また、導入前の機能状態が維持されていた人は、導入後3ヵ月間では39%に減り、12ヵ月間では13%にまで減っていた。一方で導入後12ヵ月間で58%が死亡していた。

変量効果モデルで、透析導入は急激な機能低下と関連していること、MDS-ADLスコアは2.8点増大(95%信頼区間:25.~3.0点)したことが示された。これらは、年齢、性、人種、透析導入前の機能状態から予測される軌跡と独立していた。

機能低下は、導入前3ヵ月間に加速度的な機能低下があったか否かで補正しても、透析導入との関連は強いままだった(1.7ポイント、95%信頼区間:1.4~2.1)。

Tamura氏は、「ESRDのナーシングホーム入所者への透析導入は、機能低下と強く関連しており、持続的な機能低下をもたらすものである」とまとめている。

(医療ライター:朝田哲明)