研修医によるケア後の有害事象は、やはり年度初月に集中していた

提供元:ケアネット

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公開日:2009/11/06

 



研修医によるケア後の有害事象の発生は、臨床何年目かを問わず、年度初めの月に集中して起きていることが明らかにされた。スイス・ジュネーブ大学附属病院麻酔学・薬理学・集中治療部門のGuy Haller氏らが実施した、診療・患者データからの後ろ向きコホート研究によるもの。年度替わりには、米国の教育病院では10万人以上のインターン/レジデントが、ヨーロッパでは32,000人以上が新たな臨床トレーニングに就く。この「過渡期」に入院するのは最悪だ(英国では「August killing」、米国では「July phenomenon」)と言われているが、実際にこの時期に有害事象が増大するのか、ケアの質が低下するのかが検証された。BMJ誌2009年10月24日(オンライン版2009年10月13日)からの報告。

臨床研修の経験年数(1~5年)にかかわらず、年度初月に多発




調査は、研修医による麻酔処置後の有害事象の発生を調べる形で行われた。オーストラリア・メルボルンにある大学の関連病院で臨床研修に従事する、1~5年目の臨床医による麻酔処置後のデータ(1995~2000年の5年分)が集められ、有害事象の発生率などが解析された。

結果、有害事象の発生率は、学年度初めの月(オーストラリアでは2月)が、当該年度の残りの月と比べて、より高いことが明らかになった(1,000患者・時間当たり、137件 vs. 107件、相対的な減少率28%、P<0.001)。

この学年度初月のリスクが高いという現象は、臨床研修1年目だけでなく(粗発生率:1.21)、最終5年目でも見られた(同:1.65)。なお有害事象の全発生率は、補正後で1.40(95%信頼区間:1.24~1.58)だった。

単に経験の問題ではなく、働く環境、チームワーク、コミュニケーションも関係?




一方、リスク発生は、初月以後は徐々に減少し、4ヵ月以後は完全に消失する傾向が見られた(4ヵ月の発生率:1.21、95%信頼区間:0.93~1.57)。

減少率が大きかったのは、中枢・末梢神経損傷(相対差:82%)、患者への酸素供給不足(同66%)、手術室での嘔吐/吸引手技(53%)、気管内チューブ設置の技術的な失敗(49%)だった。

Haller氏は、「有害事象は、臨床経験年数を問わず学年度初月に、より多発していた。このことは、有害事象増大の背景要因として、従事する環境、チームワーク、コミュニケーションといったことがあることを示唆している」と結論している。