英国における抗うつ薬処方は、ここ20年で実質的にかなりの伸びを示したという。処方率の増加は1970年代中頃から確認されているが、特に2000~2005年の間に処方率は36%増、コストは20%増を示した。その半分は、45%増という伸びを示した選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が占めた。2005年以降も、特許切れを迎えた製剤がありコストは減少したが、SSRIについてはさらに増加しているという。英国・サウサンプトン大学Aldermoor医療センターのMichael Moore氏らは、こうした長期的増加傾向の要因について、登録患者300万人分が集約されている開業医リサーチデータベース「GPRD」を使って明らかにすることを試みた。BMJ誌2009年10月24日号(オンライン版2009年10月15日号)より。
開業医研究データベースから長期変化を読み取る
本調査は、GPRDから開業医の処方パターンの長期変化を読み取ることを目的とした。具体的には、新規うつ病患者は増えているのか、抗うつ薬新規処方の割合は増えているのか、新規症例に対し処方期間は長くなっているのか、全体的に抗うつ薬の長期投与(再処方)例が増えているのかが調べられた。
対象としたのは、GPRDの1993~2005年のデータのうち、同年期間中のデータが集約可能であった170診療所170万人分のデータ中の新規うつ病全症例とした。
患者発生率は減少傾向、一方で長期治療が必要な患者が増えていることが明らかに
対象期間中、初発のうつ病エピソード患者は18万9,851例だった。そのうち15万825例(79.4%)が、診断を初めて受けた年に抗うつ薬を処方されていた。この割合は調査期間中ほぼ一定していた。
新規症例は、若い女性で増加していた。しかしそれ以外では、わずかだが減少しており、総発生率は、わずかだが減少していた。男性は、1993年は7.83件/1,000患者・年だったが、2005年は5.97件/1,000患者・年に、女性は15.83件/1,000患者・年から10.06件/1,000患者・年へと減少している。
一方で、1患者当たりの平均処方回数が、1993年の2.8回が、2005年には5.6回とほぼ2倍になっていた。抗うつ薬処方の大半は、維持療法として、あるいはうつのさまざまなエピソードを呈する患者に断続的に投与されていた。
これらからMoore氏は、「抗うつ薬処方率の増大は、主に維持療法を受けている患者が、わずかずつだが増えているためと説明できる。これまでの臨床ガイドラインは、抗うつ薬の開始についておよびターゲッティングに集中していたが、抗うつ薬処方のコスト増大に言及するには、今後の研究およびガイドラインでは、長期投与例の妥当性、処方の定期的なレビューについて注目する必要がある」と結論した。