貧血症が、2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)患者の心血管および腎臓イベントの、リスク増加と関連することは知られているが、貧血治療薬darbepoetin alfaの、これら患者の臨床転帰に対する効果は十分検討されていない。米国ブリガム&ウィメンズ病院循環器部門のMarc A. Pfeffer氏らは、被験者約4,000名を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験「TREAT」にて、その効果について検討した。NEJM誌2009年11月19日号(オンライン版2009年10月30日号)より。
死亡または心血管イベントと、死亡またはESRDの各複合転帰を評価
TREAT(Trial to Reduce Cardiovascular Events with Aranesp Therapy)試験には、24ヵ国623施設から、糖尿病、CKD、貧血症を有する患者4,038例が参加した。被験者は、ヘモグロビン濃度約13g/dLを目標として、darbepoetin alfa投与群(2,012例)とプラセボ投与群(2,026例)に無作為に割り付けられた。なお、ヘモグロビン濃度9.0g/dL未満となった場合は緊急的にdarbepoetin alfaを投与することとされた。
主要エンドポイントは、死亡または心血管イベント(非致死的心筋梗塞、うっ血性心不全、脳卒中、心筋虚血による入院)、死亡または末期腎不全(ESRD)の各複合転帰とした。
複合転帰改善せず、脳卒中リスクを増加
死亡または心血管イベントの複合転帰は、darbepoetin alfa群では632例で発生し、プラセボ群は602例だった(ハザード比:1.05、95%信頼区間:0.94~1.17、P = 0.41)。死亡またはESRDの複合転帰は、darbepoetin alfa群では652例発生し、プラセボ群は618例だった(1.06、0.95~1.19、P = 0.29)。
また致死的あるいは非致死的脳卒中が、darbepoetin alfa群で101例発生した。プラセボ群では53例で、ハザード比は1.92(95%信頼区間:1.38~2.68、P<0.001)だった。
一方、赤血球輸血例はdarbepoetin alfa群では297例だったが、プラセボ群では496例に上った(P<0.001)。darbepoetin alfa群がプラセボ群より改善ポイントが上回っていたのは、患者報告に基づいた疲労についてだけで、改善度はわずかだった。
これらから研究グループは、「糖尿病、CKD、そして中等度の貧血症で、透析を受けていない患者へのdarbepoetin alfaの投与は、2つの主要な複合転帰リスクをともに減じることはなかった。一方で脳卒中リスク増加と関連しており、そのリスクは、臨床上の意思決定に関与する多くの人にとって、期待できるベネフィットよりも上回る」と結論づけている。
(医療ライター:朝田哲明)