中国の一般人口においては、血圧の上昇が、予防可能な若年死の主要リスク因子であることが、アメリカTulane大学保健医療・熱帯医学科のJiang He氏らが実施したコホート研究で明らかとなった。2000年の調査では世界の高血圧罹患者数は9億7,200万人(世界人口の26.4%)で、2025年にはこれが60%増加して15億6,000万人に達すると予測される。しかも、この数値には心血管疾患リスクを増大させることがわかっている高血圧前症は含まれず、いくつかの国の調査では成人の30%以上が高血圧前症とされる。中国では、高血圧に起因する死亡の実態はよくわかっていないという。Lancet誌2009年11月21日号(オンライン版2009年10月6日号)掲載の報告。
40歳以上の約17万人をサンプルとした前向きコホート研究
研究グループは、中国における血圧上昇に起因する若年死の実態を調査するために、プロスペクティブなコホート研究を実施した。
サンプルとして40歳以上の16万9,871人を登録した。1991年にベースライン調査として血圧などのリスク因子を測定し、1999~2000年にフォローアップの評価を行った。
2005年の中国の平均寿命(女性:75歳、男性:72歳)に達する前の死亡を若年死と定義した。同年の中国の人口寄与リスク、死亡率、人口規模のデータを用いて血圧に起因する総死亡数および若年死数を算出した。
血圧上昇による総死亡数は233万人、若年死は127万人
高血圧および高血圧前症は、いずれも全原因死亡および心血管死の増加と有意な相関を示した(p<0.0001)。2005年の血圧の上昇に起因する心血管疾患による死亡数は233万人と推算された。そのうち、高血圧が原因の死亡が211万人、高血圧前症によるものは22万人であった。
血圧の上昇に起因する心血管疾患が原因の若年死数は127万人であり、そのうち高血圧による死亡が115万人、高血圧前症によるものは12万人であった。血圧関連死のほとんどが脳血管疾患によるもので、総死亡数は186万人、若年死は108万人であった。
著者は、「血圧の上昇は、中国の一般人口における予防可能な若年死の主要リスク因子である」と結論し、「血圧上昇の予防とそのコントロールは、中国における保健医療の最優先課題である」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)