イギリスの直近20年のダウン症児出生数の傾向

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2009/12/04

 



高年齢出産はダウン症児が産まれるリスクが高いが、イギリスでは2001年のUK National Screening Committeeの全妊婦に対する出産前スクリーニング受診の勧告などで、現在は1990年代初期に比べると出産前スクリーニングの利用が増えており、2007~2010年の勧告では、出産前スクリーニングにより陽性率3%未満、検出率は75%になるだろうとしていた。そこでロンドン大学クイーン・メアリー校のJoan K Morris氏らは、その実際を明らかにするため、イギリスNational Down Syndrome Cytogenetic Registerを解析しダウン症児数と出産前診断の傾向を解析した。BMJ誌2009年11月21日号(オンライン版2009年10月26日号)掲載より。

出産前・後の診断率は71%増加、ダウン症児出生は1%減




National Down Syndrome Cytogenetic Registerには、イングランドとウェールズで1989年以降に行われたダウン症候群の出産前・出産後診断の、細胞遺伝学的検査に基づく詳細なデータ26,488例が保管されている。Morris氏らはこれらのデータから、出産前スクリーニング、診断、そして診断後の中絶状況について解析した。主要評価項目はダウン症候群を有した出生数とした。

結果、1989/90年と2007/8年とでは出生数は同等だったが、ダウン症候群の出産前・出産後診断は、1989/90年の1,075例から2007/8年の1,843例に71%増加していた。

ダウン症児の出生数は、出産前スクリーニングとその後の中絶によって1%減少していた(752例から743例、出生数1,000例当たり1.10から1.08に減少)。

しかしながら、仮にスクリーニングが行われなかったとしたら、カップルの婚期が遅くなっていることもあり、ダウン症児の出生数は959例から1,422例まで48%増加していたであろうことが推計されたという。

母親が37歳以上の場合、異常妊娠の出産前診断率は一貫して70%だった。一方、若い母親での出産前に診断される異常妊娠の比率は、スクリーニングテストの受診率と感度の向上によって3%から43%に増加した。

出産の高年齢化でダウン症児出生の可能性は今後も高まる




1989年以降取り組まれてきた出産前スクリーニングの推進と改善によって、母体年齢の上昇に起因するダウン症児の増加は相殺されてきた。出産前診断の実施率はより若い女性で著しく増加したものの、より高年齢の女性では比較的一定したままである。Morris氏は、この傾向は将来、スクリーニングのさらなる向上によってもダウン症候群を有する出生が多数起こり得ることを示唆するものであると同時に、ダウン症児の出生数のモニタリングが必須であることを示唆するものだとまとめている。