多彩な冠疾患のリスクマーカー、その強みと弱み

提供元:ケアネット

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公開日:2009/12/11

 



冠疾患との関連が指摘されるリスクマーカーは心理社会的、行動的、生物学的など多様である一方、それぞれが現にガイドラインに含まれている。そうした中で、これまでのシステマティックレビューは、1つのリスクマーカー、1つの研究デザインに焦点を合わせた「縦」の比較検討がされてきたが、異なるタイプのリスクマーカー、異なる固有の限界や不足を有する異なる研究デザインを組み込んでの「水平」比較が必要ではないかとの指摘が高まった。ロンドン大学衛生熱帯医学校のHannah Kuper氏らは、この「水平」比較に取り組み、BMJ誌2009年11月28日号(オンライン版2009年11月5日号)で結果を発表した。

うつ、運動、CRP、2型糖尿病の4つのリスクマーカーを水平比較




冠疾患の多様なリスクマーカーのエビデンスを系統的に比較するための新しい方法論を開発し、さらに求められたエビデンスとガイドラインにおける勧告とを比較するため、Kuper氏らは、Medlineとガイドラインを基に水平システマティックレビューを行った。

2人のレビュアーにより、4つのリスクマーカー(うつ、運動、C反応性蛋白:CRP、2型糖尿病)のエビデンスを求めた3つの異なる試験デザイン(観察研究、遺伝子研究、無作為化試験)の適格性を判定。

4つのリスクマーカーについて、観察研究の大規模メタ解析、遺伝学的研究、メタ解析と個々の無作為化試験の分析が行われた。

現行ガイドラインは、うつとの関連に重きを置きすぎている




観察研究のメタ解析による冠疾患の補正相対リスクは、うつが1.9(95%信頼区間:1.5~2.4)、運動の最高と最低との4分位の比較で0.7(0.5~1.0)、CRPの最高と最低との3分位の比較で1.6(1.5~1.7)、そして糖尿病では女性は3.0(2.4~3.7)、男性は2.0(1.8~2.3)だった。事前特定された試験の限界は、うつと運動で最も多く見られたという。

遺伝的変化を用いて交絡因子を排除するメンデル無作為化試験のメタ解析では、CRPを特定することはできた(ただしそれがもたらす影響の裏づけはできなかった)が、運動、糖尿病、うつの影響については確認できなかった。

無作為化試験の検討からは、冠疾患の発病率とうつ、運動、CRPとの関連を示すエビデンスは求められず、糖尿病患者の試験において、血糖コントロールが冠疾患リスクに対する予防効果があることがわずかに認められた。冠疾患患者にうつ病治療を行っていた4つの無作為化試験は、いずれも冠動脈イベントリスクの低下は示されていなかった。

これらを踏まえ、2007年に公表された2つのガイドラインと今回の水平エビデンス・レビューとを比較した結果、ガイドラインではうつに重きを置きすぎているという点で明らかな食い違いが見られたという。

研究グループは、今回の水平システマティックレビューによって、うつ、運動、CRP、糖尿病を冠疾患の原因とするエビデンスの弱みと強みを特定することができたと述べ、この新しい手法が、今後のガイドラインおよび研究開発に寄与するであろうと報告をまとめている。