塩分の摂り過ぎで脳卒中と心血管疾患リスクが増大、メタ解析で明らかに

提供元:ケアネット

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公開日:2009/12/18

 



過去40年に実施されたプロスペクティブ試験のメタ解析の結果、塩分摂取量が多いと、少ない場合に比べ脳血管および心血管イベントの発生リスクが増大することが確認された。実験的研究、疫学調査、そして介入試験によっても、習慣的な塩分摂取量と血圧の間の因果関係が示され、減塩により高血圧患者だけでなく正常血圧者においても有意な降圧が得られることが報告されている。しかし、これらのうち十分な統計学的なパワーを持つ臨床試験はほとんどなく、また現状では同様の臨床試験を行うには大きな困難が伴うという。そこで、イタリア・ナポリ大学医学部臨床・実験医学科のPasquale Strazzullo氏らは過去の臨床試験のメタ解析を行い、BMJ誌2009年12月5日号(オンライン版2009年11月24日号)で報告した。

塩分摂取量の多寡と脳卒中、心血管疾患リスクの関連を検討した前向き試験のメタ解析




研究グループは、習慣的な塩分摂取と脳卒中、心血管疾患のアウトカムの関連について評価するために、プロスペクティブ試験に関する系統的なレビューを行い、メタ解析を実施した。

1966~2008年までの医学関連データベースを検索した。適格基準を満たした論文から相対リスクおよび95%信頼区間(95%CI)を抽出し、分散逆数で重み付けした変量効果モデルを用いてプールした。不均一性および出版バイアスを評価し、サブグループ解析、メタ回帰解析を行った。

適格基準には、1)成人を対象としたプロスペクティブな試験、2)ベースラインにおける塩分摂取の評価、3)アウトカムとしての脳卒中あるいは心血管疾患の評価、4)少なくとも3年以上のフォローアップ、5)個々の塩分摂取量別の対象人数およびイベント発生数の記述があることなどが含まれた。

1日の塩分摂取量が5g多いと脳卒中が23%、心血管疾患が17%増える




13の試験から19の独立コホートのサンプルが得られ、17万7,025人が解析の対象となった。フォローアップ期間は3.5~19年、脳血管および心血管のイベント数は1万1,000件以上にのぼった。

塩分摂取量が多い群は、少ない群よりも脳卒中のリスクが有意に高く(相対リスク:1.23、95%CI:1.06~1.43、p=0.007)、心血管疾患リスクは有意差はないものの高い傾向が見られた(相対リスク:1.14、95%CI:0.99~1.32、p=0.07)。有意な出版バイアスは認めなかった。

心血管疾患について感受性解析を行ったところ、1つの試験を除外するとプールされた相対リスクの推定値が1.17(95%CI:1.02~1.34)となり、有意な差が示された(p=0.02)。

これら関連性は、塩分摂取量の差が大きくなるほど、またフォローアップ期間が長くなるにしたがって増強した。

本試験における塩分摂取量の多い群と少ない群の摂取量の差の平均値は約5g/日(小さじ1杯分)であった。西欧諸国の習慣的な1日塩分摂取量は約10gである(東欧やアジア諸国はさらに多い)が、この5g分を減塩するとWHOの推奨摂取量である5g/日となる。

著者は、「塩分摂取量が多いと、脳卒中および心血管疾患のリスクが有意に増大し、このリスクは摂取量依存性に上昇することが示された」と結論し、「塩分摂取量の測定の不正確さゆえに、効果量(effect size)が過小評価されている可能性がある」としたうえで、「心血管疾患を予防するには、一般人口における実質的な減塩の役割が大きいことが示唆される」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)