ステント留置後18ヵ月間の費用対効果を検討すると、薬物溶出ステント(DES)が効率的なのは高リスク病変への留置のみであり、低リスク病変に対する費用対効果はベアメタル・ステント(BMS)に軍配が上がることが、無作為化試験BASKETの結果明らかになった。Basel(スイス)、University HospitalのHans Peter Brunner-La Rocca氏らがLancet誌11月3日号で報告した。
DES、BMSの主要心イベント抑制の費用対効果を検討
BASKET(Basel Stent Kosten Effektivitats Trial)の対象は、Rocca氏らの施設にて2003年5月から1年の間にPCIを受けステントを留置された826例。ステント長が4.0mm以上だった例、あるいはステント内狭窄例は除外されている。これらをDES群(545例)とBMS群(281例)に無作為化し、主要心イベント(心臓死、非致死性心筋梗塞、虚血症状寛解のための責任病変血行再建再施行)発生を18ヵ月間追跡し、両ステントによる主要心イベント抑制の費用対効果を検討した。
病変部のリスクにより費用対効果が異なる
18ヵ月後、主要心イベント発生率は両群間に有意差はなかった。
次に、BMSとDESを置き換えた場合のコストの増減を縦軸に、主要心イベント相対リスクの変化を横軸にとり、実測値をBootstrap法にて5,000サンプルへシミュレートのうえプロットした(Cost-effectiveness plane)。
するとDESがBMSよりも「安価で有効(主要心イベントを減少させる)」である機会は3%しかなく、「高価で有効」は71%、逆に「高価で無効」となる可能性が26%あった。
しかし患者を低リスクと高リスクに分けて検討すると、高リスク群ではDESの費用対効果が優れていた。すなわち、バイパス・グラフトへの直径3.0mm未満のステント留置では、71%のケースでDESがBMSよりも「安価で有効」となっていた。
一方、インターベンション歴のない血管に対する直径3.0mm以上のステント留置(低リスク)では逆に、75%のケースでDESがBMSよりも「高価で無効」となると考えられた。
このような解析を基にRocca氏らは、ルーチンなDES留置に対しては費用対効果の観点から疑義を呈している。
(宇津貴史:医学レポーター)