米国カリフォルニア州の公衆衛生局Janice K. Louie氏らは、州内の妊産婦の、2009新型インフル(H1N1インフルエンザ)による入院または死亡に関する報告データを精査した。その結果、2009新型インフルは妊産婦に、重症疾患および死亡をもたらすこと、2009年の州内妊産婦の死亡率は高まることが予想され、2009年の全米の妊産婦死亡率も高まる可能性が示されたことを報告した。NEJM誌2010年1月7日号(オンライン版2009年12月23日号)より。
抗ウイルス薬服用開始が遅かった妊婦の重症化・死亡リスクは、早かった妊婦の4.3倍
精査されたのは、2009年4月23日~8月11日までに報告された、15~44歳までの妊娠可能な年齢にいる女性で2009新型インフルに感染し入院した妊婦94例、出産後2週間以内の女性8例、非妊産婦137例について。
このうち迅速抗原検査で偽陰性だったのは38%(58/153例)だった。
妊婦の大半(95%、89/94例)は妊娠第二または第三期・後期にあり、約3分の1(34%、32/93例)に妊娠以外のインフルエンザによる合併症がリスクファクターとして認められた。
妊婦で抗ウイルス薬服用開始が遅かった人の、ICU入室または死亡に関する相対リスクは、早かった人(症状発症後2日以内)と比べて4.3倍に上った。
妊産婦102例のうち、妊婦18例、出産後女性4例の計22例(22%)が集中治療を受け、8例(8%)が死亡した。ICU入室中の出産例は6例で、そのうち4例は緊急帝王切開だった。
カリフォルニア州の2009新型インフルに特異的な妊産婦死亡率(出生10万当たりの妊産婦死亡数)は、4.3だった。Louie氏は、妊産婦死亡統計では例年、インフルエンザによるものはほとんど見られず、2009年はカリフォルニア州のみならず全米で、2009新型インフルによる死亡率上昇が示される可能性が高いと結論した。
また一方で今回の調査の結果から、妊産婦には迅速抗原検査の結果にかかわらず、迅速にインフルエンザ様疾患の評価と抗ウイルス薬投与を行わなくてはならないとも述べている。
(医療ライター:武藤まき)