循環血中のC反応性蛋白(CRP)濃度は、確立された従来のリスク因子や炎症マーカーと関連するとともに、様々な血管疾患、非血管疾患とも相関を示すことが、イギリス・ケンブリッジ大学のStephen Kaptoge氏らEmerging Risk Factors Collaboration(ERFC)が実施したメタ解析で明らかとなった。肝臓で合成される血漿蛋白であるCRPは、高い感受性を示す全身性の炎症マーカーであり、重篤な感染に対する急性反応や組織損傷時に血中濃度が1万倍にまで上昇するという。また、LDLと結合して動脈硬化性プラーク中に発現するため冠動脈心疾患の原因とも考えられており、22のプロスペクティブ試験のメタ解析ではCRP高値の場合は冠動脈心疾患の相対リスクが高いことが示されている。Lancet誌2010年1月9日号(オンライン版2009年12月22日号)掲載の報告。
54試験16万例の個々の患者記録のメタ解析
ERFCの研究グループは、さまざまな状況におけるCRPと血管疾患もしくは非血管疾患のリスクの関連を評価するメタ解析を行った。
54の長期的なプロスペクティブ試験に登録された血管疾患の既往歴のない16万309例(131万人・年に相当)の個々の患者記録に基づいてメタ解析を行った。リスク因子の程度による個人内の変動は試験ごとの回帰分析で補正した。
CRP濃度と虚血性脳卒中の関連には従来リスク因子の関与が大きい
Log(e) CRP濃度はいくつかの従来のリスク因子(収縮期血圧、BMI、非HDLコレステロールなど)や炎症マーカー(フィブリノーゲン、インターロイキン-6)と直線的に関連し、虚血性血管疾患や非血管疾患とほぼ対数線形的な相関を示した。
Log(e) CRP濃度の1SD上昇(3倍の高値に相当)ごとの冠動脈心疾患のリスク比は、年齢と性別のみによる初回補正時が1.63、さらに従来のリスク因子で補正した場合は1.37であった。同様に補正した場合のリスク比は、虚血性脳卒中がそれぞれ1.44、1.27と従来リスク因子の影響が最も大きく、血管死はそれぞれ1.71、1.55、非血管死の場合は1.55、1.54であった。
喫煙者や初回フォローアップ患者を除外すると、補正によるリスク比の変化はほとんど見られなくなった。フィブリノーゲンで補正後のリスク比は、冠動脈心疾患が1.23、虚血性脳卒中が1.32、血管死が1.34、非血管死も1.34であった。
著者は、「CRP濃度は、冠動脈心疾患、虚血性脳卒中、血管死、非血管死(数種のがん腫および肺疾患による死亡)のリスクと持続的な関連性が認められた。虚血性脳卒中とCRP濃度の関連は、従来のリスク因子や炎症マーカーへの依存度が大きかった」と結論している。
また、「インターロイキン-6、CRP、フィブリノーゲンなどの炎症マーカーや、リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2などの易破綻性プラークのマーカーとともに、その遺伝学的因子やライフスタイル要因を同時に評価する大規模な試験を行う必要があり、また軽度の炎症が外的なトリガー(社会経済的地位や感染など)、インスリン抵抗性、遺伝的素因、これらの因子の組み合わせを反映するものなのかを検討することも重要」と考察する。
(菅野守:医学ライター)