高齢者の骨折予防におけるビタミンD単剤の用量は10~20μg/日では不十分であるが、カルシウムと併用すると大腿骨頸部骨折および全骨折が有意に抑制されることが、デンマーク・コペンハーゲン大学Gentofte病院のB. Abrahamsen氏らDIPART(vitamin D Individual Patient Analysis of Randomized Trials)の研究グループが実施したプール解析で明らかとなった。高齢者の骨折予防におけるビタミンDの使用については理論的な根拠が確立されているが、骨折予防に必要な用量は明確になっておらず、カルシウム併用の意義も不明であった。BMJ誌2010年1月16日号(オンライン版2010年1月12日号)掲載の報告。
7つの無作為化試験からプールされたデータを用い、個々の患者レベルで解析
DIPARTの研究グループは、全骨折、大腿骨頸部骨折、臨床的椎骨骨折に対するビタミンD単剤およびビタミンD+カルシウムの予防効果を、患者特性を踏まえて検討し、ビタミンDの用量およびカルシウム併用の意義について評価を行った。
ビタミンD単剤あるいはビタミンD+カルシウムの骨折予防効果について検討した7つの主要な無作為化試験からプールされたデータを用いて、個々の患者レベルのデータ解析を行った。解析の対象となったのは合計68,517例で、平均年齢が69.9(47~107)歳、男性は14.7%であった。
より高用量のビタミンD単剤の試験を行うべき
ビタミンD+カルシウムに関する試験では、全骨折のリスクが有意に低減した(ハザード比:0.92、95%信頼区間:0.86~0.99、p=0.025)。大腿骨頸部骨折のリスクについては、全試験の解析では有意な予防効果を認めなかったが(ハザード比:0.84、95%信頼区間:0.70~1.01、p=0.07)、ビタミンD用量10μg+カルシウムの試験では骨折リスクが有意に低減した(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.60~0.91、p=0.005)。
ビタミンD単剤を10μg/日あるいは20μg/日投与する試験の解析では、有意な骨折予防効果は認められなかった。骨折の既往歴と治療効果に関連は認めず、年齢、性別、ホルモン補充療法の既往歴も治療効果に影響を及ぼさなかった。
著者は、「ビタミンD単剤10~20μg/日の投与に骨折予防効果はない。一方、ビタミンD+カルシウムの併用投与により、年齢、性別、骨折の既往歴にかかわらず、大腿骨頸部骨折および全骨折の頻度が低減し、おそらく椎骨骨折の予防効果もあると推察される」と結論し、「ビタミンDとの併用における骨折予防に必要なカルシウムの用量は1,000mg/日以上と考えられる。より高用量のビタミンD単剤の試験を行う必要がある」と指摘している。
(医学ライター:菅野守)