高齢者に対し、イチョウ葉エキス(Ginkgo biloba)を長期に投与しても、認知能力低下の抑制効果はみられないことが報告された。イチョウ葉エキスについて、その長期的効果の有無を検討した大規模臨床試験は珍しいという。米国・ピッツバーグ大学神経内科のBeth E. Snitz氏らが、3,000人超の高齢者について行った、無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Ginkgo Evaluation of Memory」(GEM)の結果明らかにしたもので、JAMA誌2009年12月23/30日合併号で発表した。
記憶力、注意力、空間視覚能力などの低下幅に有意差なし
GEM試験は、2000~2008年にかけて米国の6つの大学病院で、72~96歳の高齢者3,069人を2群に分け、一方の群にはイチョウ葉エキス120mgを1日2回(1,545人)、もう一方の群にはプラセボを投与(1,524人)し追跡した。
追跡期間中、改変ミニメンタルステート検査(3MSE)とアルツハイマー病評価尺度の認知度サブスケール(ADAS-Cog)検査、記憶力や注意力などに関する検査を定期的に行った。追跡期間の中央値は、6.1年だった。
その結果、記憶力や注意力などに関するZスコアの年間低下幅は、投与群とプラセボ群で有意差がなかった。具体的には、投与群とプラセボ群のZスコア年間低下幅はそれぞれ、記憶力が0.043と0.041、注意力が0.043と0.048、空間視覚能力が0.107と0.118、言語力が0.045と0.041、実行機能が0.092と0.089だった。
3MSEとADAS-Cogのスコア低下率、両群で差はみられず
3MSEとADAS-Cogいずれのスコアは基線では差があったにもかかわらず、低下率は両群で有意差がなかった(3MSEについてのp=0.71、ADAS-Cogのp=0.97)。
能力低下に対する治療効果には、年齢や性別、人種や教育レベル、APOE*E4対立遺伝子の有無や試験開始時の軽度認知障害の有無などで、有意差はなかった(p>0.05)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)