多発性硬化症に対する経口fingolimod、2年間の有効性確認

提供元:ケアネット

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公開日:2010/02/17

 



多発性硬化症の治療薬として開発中の、経口fingolimod(FTY720、フィンゴリモド;スフィンゴシン1リン酸受容体調節薬)は、リンパ節からのリンパ球放出を抑制する作用が特徴の免疫抑制薬である。これまで第II相、第III相(12ヵ月間)臨床試験の結果、プラセボまたはインターフェロンβ-1a筋注と比べて、多発性硬化症の再発率およびMRI評価のエンドポイントを有意に改善することが明らかになった。本稿は、スイス・バーゼル大学病院Ludwig Kappos氏らFREEDOMS治験グループによる、24ヵ月間の第III相プラセボ対照二重盲検無作為化試験の報告で、NEJM誌2010年2月4日号(オンライン版2010年1月20日号)に掲載された。

再発寛解型多発性硬化症患者1,033例を対象に




治験グループは、障害のEDSSスケール(Expanded Disability Status Scale、0~10の範囲で、スコアが高いほど障害の程度が高い)スコアが0~5.5で、過去1年間に1回以上の再発または過去2年間に2回以上再発したことがある18~55歳の再発寛解型多発性硬化症患者1,272例を登録、24ヵ月間にわたって二重盲検無作為化試験を行った。被験者は経口fingolimodまたはプラセボを1日1回、0.5mgまたは1.25mg投与された。

エンドポイントは、年間の再発率(主要エンドポイント)と障害進行までの期間(副次エンドポイント)とした。

被験者のうち試験を完了したのは、計1,033例(81.2%)だった。

0.5mg、1.25mg用量とも24ヵ月間の再発率、障害進行リスクを有意に低下




主要エンドポイントの年間再発率は、fingolimod 0.5mg投与群が0.18、fingolimod 1.25mg投与群が0.16に対し、プラセボ投与群は0.40だった(投与群対プラセボはいずれもP<0.001)。

副次エンドポイントに関しては、fingolimod投与群は用量0.5mgと1.25mgとも、24ヵ月間の障害進行リスクが有意に低下した(ハザード比はそれぞれ0.70と0.68、両群間比較における対プラセボP=0.02)。

障害進行の累積確率(3ヵ月時点確認)は、fingolimod 0.5mg群17.7%、fingolimod 1.25mg群が16.6%、プラセボ群は24.1%であった。またfingolimod投与群はいずれの用量群も、MRI関連評価項目について、プラセボより優れていた(24ヵ月時点の全比較P<0.001)。

fingolimod投与に関連した試験中断の原因や有害事象は、投与開始時の徐脈および房室ブロック、黄斑浮腫、肝酵素レベル上昇、軽度高血圧症などだった。

以上から治験グループは、「経口fingolimodの投与はいずれの用量とも、プラセボと比較して再発率、障害進行リスク、MRI評価のエンドポイントを改善した」と結論、「これらのベネフィットについて、起こり得る長期リスクとの比較検討が必要」とまとめている。

(医療ライター:朝田哲明)