糖尿病の早期発症が死亡率を高めること、成人期における心血管リスク因子と寿命との関連性は明らかだが、小児期における心血管リスク因子が寿命に影響を及ぼすメカニズムはほとんどわかっていない。米国NIHのPaul W. Franks氏ら研究グループは、その関連性を明らかにすることは、小児期の心血管リスク因子が与える人的・経済的損失を予測可能とし、健康状態を改善し早世率(本論では55歳未満での死亡と定義)を低下させるための介入が可能になるとし、40年にわたる追跡調査を行った。その結果が、NEJM誌2010年2月11日号で発表されている。
アメリカ先住民4,857例の早世例をリスク因子ごとに評価
研究グループは、1945~1984年の間に生まれた非糖尿病のアメリカ先住民4,857例の小児コホート(平均年齢11.3歳)について、BMI、耐糖能、血圧、コレステロールの各値を調査し(計12,659回)、早世の予測因子となるかどうかを評価した。
各リスク因子は性、年齢で標準化され、比例ハザードモデルを用いて、55歳未満で死亡するまでの期間との関連が判定された。モデルは、基線での年齢、性、出生コホート(アメリカ先住民の系統としてピマ族かトホノ・オオダム族か)によって補正された。
肥満は2倍、耐糖能異常は1.73倍、高血圧は1.5倍、早世率を高める
追跡期間中央値23.9年間で、内因性死亡は166例(コホートの3.4%)あった。
内因性死亡率について、BMI値が最高四分位群の小児は、同最低四分位群の2倍以上だった(出現率比:2.30、95%信頼区間:1.46~3.62)。
耐糖能異常では、最高四分位群の死亡率が、最低四分位群より73%高かった(同:1.73、1.09~2.74)。
一方、内因性または外因性の死亡率と、小児期コレステロール値、収縮期・拡張期血圧値との間には有意な関連性はみられなかった。ただし、小児期高血圧は内因性による早世と有意な関連が認められた(同:1.57、CI 1.10~2.24)。
研究グループは、「この集団において、小児期の肥満、耐糖能異常、高血圧は内因性による早世率の上昇と強く関連していた。対照的に、小児期高コレステロール血症は内因性による早世の主要な予測因子ではなかった」とまとめている。
(医療ライター:武藤まき)