乳房温存手術後の胸部放射線療法は乳がん死亡率を低下することが最新のメタ解析によっても示されているが、北米の乳がん女性の最大30%が、治療回数が多いことや費用を理由に放射線療法を受けていない。そこでカナダ・マクマスター大学JuravinskiがんセンターTimothy J. Whelan氏は、生物学的モデルで有効性が示された少分割・短期間照射に関して、無作為化試験を実施した。2002年の追跡5年時点の検討で、その有効性(再発率・美容的アウトカム)が示されたが、放射線の毒性は1回当たりの照射線量が多いほど時間とともに増大するという懸念がある。本論はその懸念に応える追跡期間中央値12年の段階で行われた、10年時点の結果を検討した報告。NEJM誌2010年2月11日号に掲載された。
被験者1,234例を標準照射群と少分割照射群に無作為化し追跡
Whelan氏らは、至適な照射スケジュールを明らかにするため、胸部全体への照射を3週間スケジュールで行う方法と、5週間スケジュールで行う方法との有効性を検討した。
被験者は、浸潤性乳がんで乳房温存術を受けた、切除断端部クリア、腋窩リンパ節陰性の1,234例。1993年4月~1996年9月の間に、対照群(標準線量50.0 Gyを25分割で35日間かけて照射、612例)と少分割照射群(42.5 Gyを16分割で22日間かけて照射、622例)に無作為化され追跡された。
10年時点、再発リスク、美容的アウトカムともに標準法に劣らず
追跡10年時点の局所再発リスクは、対照群6.7%だったのに対して、少分割照射群は6.2%だった(絶対差:0.5ポイント、95%信頼区間:-2.5~3.5)。
美容的アウトカムは、良好(good)もしくは優良(excellent)が対照群では71.3%、少分割照射群では69.8%だった(同:1.5ポイント、-6.9~9.8)。
Whelan氏は、「少分割照射療法は標準照射療法と比べて、10年時点でも劣らないことが認められた」と結論している。
(医療ライター:武藤まき)