高齢者の入院、退院後の認知症リスクが1.4倍に

提供元:ケアネット

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公開日:2010/03/09

 



入院をした高齢者は、疾患の程度にかかわらず退院後の認知症リスクが、入院をしなかった人に比べ有意に増大することが明らかにされた。米国ワシントン大学内科のWilliam J. Ehlenbach氏らが、約3,000人の高齢者について、前向きコホート試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2010年2月24日号で発表した。

入院後のCASIスコア、重篤・非重篤にかかわらず有意に低下




同研究グループは、1994~2007年にかけて、試験開始時点で認知症の認められない65歳以上、2,929人を対象に追跡試験を行った。追跡期間中は、2年毎に認知機能スクリーニング検査(CASI)を行い、スコアが86点未満の人については、認知症の検査を行った。

追跡期間の平均値は、6.1年(標準偏差:3.2年)。追跡期間中、重篤疾患ではない入院が1.287人、重篤疾患による入院は41人あった。入院した人のCASI評価は退院45日以後に行った(評価実施は被験者の94.3%)。

その結果、入院後のCASIスコアは、入院しなかった人の同スコアに比べ、疾患が重篤ではない人でも1.01ポイント低く(95%信頼区間:-1.33~-0.70、p<0.001)、疾患が重篤だった人では2.14ポイント低かった(同:-4.24~-0.03、p=0.047)。

入院による認知症発症リスク、非重篤疾患だと1.4倍、重篤疾患では2.3倍




認知症発症が確認されたのは、入院をしていない人146人だった一方、重篤疾患ではない入院をした人228人、重篤疾患による入院をした人5人だった。

認知症発症に関する、入院をしなかった人に対する補正後ハザード比は、非重篤疾患で入院した人が1.4(95%信頼区間:1.1~1.7、p=0.001)、重篤疾患で入院した人の同ハザード比は2.3(同:0.9~5.7)だった(p=0.09)。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)