スコットランドEdinburgh大学市民健康科学センターのF. Gerald R. Fowkes氏らは、心血管疾患症状はないものの、ABI(足関節/上腕血圧比)値が0.95以下の人に対し、アスピリンを投与しても、血管イベントリスクの低下は認められなかったことを報告した。無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2010年3月3日号で発表した。
冠動脈イベントや脳卒中、血管再建術の総合イベントリスクに有意差なし
同研究グループは、1998年4月~2008年10月にかけて、スコットランドに住む50~75歳の人で、心血管疾患症状が認められない2万8,980人について、ABI値を調べた。そのうち、ABI値が0.95以下だった3,350人を無作為に2群に分け、一方にはアスピリン100mg/日を、もう一方にはプラセボを投与した。
主要エンドポイントは、冠動脈イベント、脳卒中、または血管再建術の実施のいずれかとした。副次エンドポイントは、(1)主要エンドポイントまたは、狭心症、間欠跛行、一過性脳虚血発作のいずれか、(2)総死亡率とした。
追跡期間の平均値は、8.2年(標準偏差:1.6年)で、その間の主要エンドポイント発生は357人(13.5/1,000人・年、95%信頼区間:12.2~15.0)だった。同発生率については、プラセボ群が13.3/1,000人・年に対しアスピリン群が13.7/1,000人・年で、有意差はみられなかった(ハザード比:1.03、95%信頼区間:0.84~1.27)。
総死亡率も両群で有意差なし、出血イベントも両群で同等
副次エンドポイントの血管イベント発生率についても、プラセボ群22.9/1,000人・年に対し、アスピリン群は22.8/1,000人・年と、両群で有意差はなかった(ハザード比:1.00、95%信頼区間:0.85~1.17)。
総死亡率も、アスピリン群の死亡数が176人、プラセボ群が186人と、両群で有意差はなかった(ハザード比:0.95、同:0.77~1.16)。
なお、入院を要する多量出血の初回イベントは、アスピリン群34人(2.5/1,000人・年)、プラセボ群20人(1.5/1,000人・年)で、両群で有意差はなかった(ハザード比:1.71、同:0.99~2.97)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)