中等度リスクの子宮内膜がんのうちでも比較的リスクの高い患者(高度中リスク)に対する術後放射線治療では、膣再発に対する抑制効果は膣内小線源治療(VBT)と骨盤外部照射治療(EBRT)で同等であり、消化器系の有害事象の低減効果はVBTが優れることが、オランダLeiden大学医療センター臨床腫瘍科のR A Nout氏らが実施した無作為化試験(PORTEC-2試験)で示された。子宮内膜がんは先進国の閉経後女性における婦人科領域の悪性腫瘍のうち最も頻度の高い疾患だが、約80%は早期病変として発見され、予後は良好である。治療の基本は腹式子宮全摘術と両側卵管卵巣摘除術であり、高度中リスク例における術後の再発部位としては膣部の頻度が最も高いという。Lancet誌2010年3月6日号掲載の報告。
VBTと骨盤EBRTの膣再発率を評価する非劣性試験
PORTEC-2試験の研究グループは、高度中リスク子宮内膜がんにおけるVBTの膣再発の予防効果および有害事象、QOLの改善効果が骨盤EBRTに匹敵することを検証するために、オープンラベルの無作為化非劣性試験を行った。
2002年5月~2006年9月までに、オランダの19の放射線治療施設から高度中リスクのステージI/IIAの子宮内膜がん患者427例が登録された。これらの患者が、術後放射線治療としてVBT[高線量(7Gy/回)×3回で合計21Gy、中線量(1Gy/回)で合計28Gy、低線量(0.5~0.7Gy/回)で合計30Gyのいずれか、213例]あるいは骨盤EBRT(2Gy/回×23回=46Gy、214例)を施行する群に無作為に割り付けられた。
主要評価項目は膣再発率とし、非劣性の判定基準は膣再発率の絶対差6%とした。
膣再発、局所再発、遠隔転移、全生存率、無病生存率は同等
フォローアップ期間中央値45ヵ月における膣再発例数は、VBT群が3例、骨盤EBRT群は4例であった。予測5年膣再発率は、VBT群が1.8%、骨盤EBRT群は1.6%であり、両群で同等であった(ハザード比:0.78、p=0.74)。5年局所再発率(膣、骨盤、膣と骨盤の双方)もVBT群5.1%、骨盤EBRT群2.1%と有意な差は認めなかった(ハザード比:2.08、p=0.17)。
骨盤のみの再発率もVBT群1.5%、骨盤EBRT群0.5%と有意差はなく(ハザード比:3.10、p=0.30)、遠隔転移率はそれぞれ8.3%、5.7%と同等であった(ハザード比:1.32、p=0.46)。
全生存率はVBT群84.8%、骨盤EBRT群79.6%(ハザード比:1.17、p=0.57)、無病生存率はそれぞれ82.7%、78.1%(ハザード比:1.09、p=0.74)であり、いずれも両群間に有意な差はみられなかった。
有害事象の解析は423例(VBT群215例、骨盤EBRT群208例)で実施された。放射線治療完遂時における消化器系のグレード1~2の急性毒性の頻度は、VBT群が12.6%(27/215例)と、骨盤EBRT群の53.8%(112/208例)に比べ有意に低減した。
著者は、「VBTによる膣再発の抑制効果は骨盤EBRTと同等であり、消化器系の有害事象の低減効果はVBTが優れる」と結論し、「VBTは高度中リスクの子宮内膜がんの術後放射線治療の選択肢とすべきである」と指摘する。
(菅野守:医学ライター)