末期腎不全患者に対する至適管理に関しては、議論が分かれている。そうした中、末期腎不全患者でヘマトクリット値が低い患者への、透析中のエリスロポエチン(ESA製剤)や鉄分の静脈投与といった積極的治療が、1年死亡率の低下につながることが報告された。同時に、ヘマトクリット値が高い患者への同治療は、死亡リスクを増加することも明らかにされている。米国ノースカロライナ大学ギリング公衆衛生大学校疫学部門のM. Alan Brookhart氏らが、約27万人の透析患者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年3月3日号で発表した。
末期腎不全患者約27万人について、ヘマトクリット値で4群に分け治療効果を検討
同氏らは、1999~2007年にかけて、米国高齢者向け公的医療保険「メディケア」の受給者で末期腎不全の、26万9,717人について調査を行った。被験者の平均年齢は62.5歳、53.5%が男性で、被験者をヘマトクリット値で4群(30%未満、30~32.9%、33~35.9%、36%以上)に分け検討が行われた。
月毎の死亡率が最も高かったのは、ヘマトクリット値が「30%未満」群で2.1%。これに対し最も低かったのは同値「36%以上」群で0.7%だった。
またヘマトクリット値「30%未満」群に対して、ESA製剤の投与量が多い透析センター群が、少ないセンター群に比べ、1年死亡リスクが低かった(最高五分位範囲の最低五分位範囲に対するハザード比:0.94、95%信頼区間:0.90~0.97)。
さらに、ヘマトクリット値「33%未満」に対する鉄分投与の頻度が多いセンター群が、少ないセンター群に比べ、1年死亡リスクは低かった(最高五分位範囲の最低五分位範囲に対するハザード比:0.95、同:0.91~0.98)。
ヘマトクリット高値患者の積極的貧血治療は、死亡リスクを増加
一方で、ヘマトクリット値「33~35.9%」の患者に対する、ESA製剤の投与量が多かった透析センター群は、1年死亡リスクが高かった(最高五分位範囲の最低五分位範囲に対するハザード比:1.07、同:1.03~1.12)。
また、ヘマトクリット値「36%以上」の患者に対し、より積極的にESA製剤や鉄分投与が行われた透析センター群で、1年死亡リスクが増加していた。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)